2013/03/12
読書メモ(マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる)
マラソンはゆっくり走れば3時間を切れる! 49歳のおじさん、2度目のマラソンで2時間58分38秒 (ソフトバンク新書)
練習でゆっくり走っていては3時間を切れないと思っている私は、この本のタイトルが気になり読んでみたのですが、疲労抜きのジョギングを促す内容であり、走りを鍛えるためのポイント練習の件もしっかり書かれていました。過去にゆっくり走れば速くなる―佐々木功のマラソン秘トレーニング (ランナーズ・ブックス)
という本や、佐々木氏にコーチングを受けていた浅井選手が出した浅井えり子の「新・ゆっくり走れば速くなる」―マラソン・トレーニング改革
という本があったのですが、この本もLSD(ロング・スロー・ディスタンス)を促す内容で、メインであるハードなトレーニングもしっかり書かれています。タイトルだけだと、ゆっくり走るだけで速くなれると勘違いしてしまいそうですね。
ただ、今回読んだ本は、遅い速度で長時間走るLSDではなく、決まった公式によって疲労抜きをジョグを行うようになっています。内容を要約してみると、
・疲労抜きジョグ
1000mのベストタイムの2倍のペースタイムで走る。(1000mが3分30秒なら、ジョグはキロ7分ペース)
疲労抜きジョグはポイント練習の2倍の距離を走る。(ポイント練習が週20kmなら、疲労抜きジョグは週40km)
という内容になっています。そしてレベルアップの要となるポイント練習の内容は、インターバル走とペース走の2本立てとなっています。
・インターバル走
距離は3段階
ショート 200~400m
ミドル 800~1000m
ロング 2000~5000m
オススメしているのは1000m×7本のインターバル走。これを1セット6分回し、または5分30秒で回します。6分で回すというのは、1000mを4分間で走り、ジョグを2分間、計6分で1セット。これを7回繰り返します。5分30秒回しは、1000mを4分、ジョグを1分30秒。(これは、サブ3を目指した場合の設定タイムです)
ポイント練習は週1回から始め、トレーニングを重ねて地脚が強化されたら週2回に増やしますが、故障を避けるため、基本は週1回と書かれています。残りの日は疲労抜きジョグと休養日。ポイント練習の走行距離が週10kmなら、疲労抜きジョグは週20kmとなります。
・ペース走
1000mのインターバル走を3分45秒の5分30秒回し(1000mを3分45秒で走り、レストのジョグは1分45秒走る)が7本できるようになったら、ペース走に切り替えます。
サブ3を目指すなら、5000m走でいうと、男性なら18分以内、理想は17分55秒くらい。男性に比べて持久系数が低い女性なら、5000mを19分以内、理想は18分50秒。これくらい走れるようになったら、サブ3を射程に捉えたと思っていいとのこと。
ペース走の内容は、サブ3のペースであるキロ4分15秒ペースで10km走ります。
1週間のポイント練習での走行距離はインターバル走の10kmと、ペース走の10kmで計20km。疲労抜きジョグはその2倍の40kmとなり、月間走行距離は240kmとなります。この距離でもサブ3は狙えるとのこと。
以上の練習メニューをまとめると、
■サブ3を狙うランナーの場合
「スピードをつける時期」月間走行距離120km
インターバル走(週1回 1000m×7本)1km3分45秒を5分30秒~6分回し
疲労抜きジョグ 週20km
「スピード+持久力をつける時期」月間走行距離240km
インターバル走(週1回 1000m×7本)1km3分45秒を5分30秒~6分回し
ペース走(週1回 1km4分15秒ペース)
疲労抜きジョグ 週40km
■3時間半切りを狙うランナーの場合
「スピードをつける時期」月間走行距離120km
インターバル走(週1回 1000m×7本)1km4分15秒を6分回し
疲労抜きジョグ 週20km
「スピード+持久力をつける時期」月間走行距離120km
ペース走(週1回 10km 1km4分45秒ペース)
疲労抜きジョグ 週20km
また、サブ3のための1ヶ月メニューも書かれていました。
4週間前 40km走(1km4分35秒ペース)疲労抜きジョグ週80km
3週間前 30km走(1km4分25秒ペース)疲労抜きジョグ週60km
2週間前 20km走(1km4分15秒ペース)疲労抜きジョグ週40km
1週間前 10km走(1km4分5秒ペース)疲労抜きジョグ週20km
ここで新たなトレーニングメニューとして、ロング走(距離走)が加わりました。ただし、本書ではロング走(距離走)という表記はありません。
普段のポイント練習は合計20kmのインターバル走とペース走のみ。と書かれているのですが、このメニューに1ヶ月メニューを加えるのか、普段のポイント練習をこの1ヶ月メニューに置き換えるのかは書かれていませんでした。ただ、月間走行距離240kmでサブ3を狙えると書いてあったので、レース1ヶ月前のメニューは、インターバル走やペース走を行わず、上記の距離走のみ行うものと思われます。
他にもこの本は、疲労抜きジョグを行なって満足な記録を残せたランナーさんの体験記や、故障の解説とセルフケアの方法も書かれており、とても参考になりました。
疲労抜きジョグは、1kmのベストタイムが3分30秒なら7分以上、1km4分なら8分以上、1km4分30秒なら9分以上と書かれているのですが、私の実体験からすると、疲労抜きジョグのペースは1km6分30秒までで、それより遅くなる場合は、関節の稼働量が大きなウォーキングをする方が効果的に感じています。あまりにも遅いジョグは、足踏みをしているのに等しい状態になるため、腰が落ちた体の小さな動きの悪い走法として身体にインプットされてしまいます。足踏みジョグをやめてウォーキングにすれば、大股で歩いたり、足首を意識的に動かしたりなどをすれば、血行促進だけでなくストレッチ効果もあるし、体の上下動が少ないため、食後すぐにでも開始できます。公園など安全なルートなら、本を読みながら歩くことだってできます。つま先を上げてかかとからしっかり着地してみたり、やや内股気味で歩いたりすれば、あまり使われていなかった筋肉のトレーニングができます。
ちなみに、高橋尚子選手を育てた小出監督もLSDをススメていますが、キロあたりのペースは6分~6分30秒で120分を目安にしています。超スロージョグによる効果は人それぞれなので、一般的なスロージョグと、この本のような極端に遅いパターン、そして私がオススメするウォーキングなどをひと通り試してから、自分にあったものを見つけるほうがいいかもしれません。
ちなみに私の場合は、この方法でサブ3を達成することができました。ポイントはモチベーションの維持と、速さとスタミナの双方を鍛えるためのペース走やビルドアップ、ロング走などのハードなポイント練習、その疲労を抜くためのジョグ、筋トレやストレッチなどのメンテと食事、そして、マラソンに関するいろんな本や雑誌、ウェブを読むことでの「学び」が重要でした。人の方法論を鵜呑みにすることなく、本当にそうだろうか?と疑いながら試してみたり、自分で考えたことを試行錯誤しながらトレーニングに導入したりする方が気力は増すし、遠回りなものの走力アップは確実だったりします。チームに入ればコーチの指示に従い実行するだけですが、個人でトレーニングする場合は書籍や雑誌がコーチとなるため、コーチの選別やトレーニング方法の選択権はこちらになります。多くのコーチの意見を参考にしながらいろいろ試してみて、レースで結果を残すことができれば、やり甲斐や達成感は数倍多く感じられるかと思います。今回の書籍の田中コーチのアドバイスは非常に参考になるものが多かったので、みなさんもチェックしてみてはいかがでしょうか。