2014/03/20

レベルアップのための、やってはいけないランニング

このエントリーをブックマークに追加 このエントリーを含むはてなブックマーク
記録更新を狙った、走力アップのためのランニングを実践していると、効果が高いトレーニング方法と、効果が低いトレーニング方法がわかってくるのですが、効果の低い、あるいは無駄と思われるトレーニング方法をいくつか書いてみます。異論、反論はあるかと思いますが、あくまでも私が実践して感じたものであって、人によっては効果は違うと思いますので、参考程度にしてください。



・月間走行距離

もっともハマりやすい間違いが、月間走行距離を意識してトレーニングをするということ。
月間走行距離は、トレーニングの進捗状況が数値でわかるため目標に置きやすいのですが、今月は300km走ろう、400km走ろうという目標を掲げると、距離が長くペースの遅いトレーニングばかりになってしまいます。
距離を稼げないインターバルトレーニングや、高負荷のLT走、10kmのタイムトライアルなどは敬遠するようになり、ダラダラと長く走るジョグやLSDを好んで行うようになってしまうのですよね。
レースペースか、それ以上で走り続ける走力を養わなければならないのに、ゆっくり長く走ってばかりいては、高い心拍数の負荷は得られないため、脚力だけでなく、心肺能力のレベルアップもできず、限られた貴重なトレーニング時間を消費するばかりとなってしまいます。

「走った距離は裏切らない」という野口みずき選手の有名な言葉がありますが、それはいろんなパターンのトレーニングを行った結果であって、走行距離を目標にトレーニングをしていたわけではないですよね。
月間走行距離を伸ばすという目標は、例えば極端な話、キロ8分というウォーキング並みの超スロージョグを1時間、毎日4回行えば、月間走行距離は900kmにもなりますが、その内容では目標のレースペースで走り続ける能力はつかないし、900kmという数値にこれといった価値はないですよね。暇だったんだなあ。。。くらいしか感じられません。
速く走れるようになって大会で好成績を残す、自己ベストを更新する、サブ3を達成するというのは、誰もが褒め称えてくれる価値ある結果であり、難しいからこそ、クリアしたときの達成感はひとしおです。
レベルアップのためのトレーニングは量より質が重要。それを狂わせてしまう原因の一つが、月間走行距離を目標にしてしまうことだと思います。



・毎日のように走る

ラジオ体操かの如く、ほとんど毎日欠かさずランニングをする方も見えるようですが、これも上記の月間走行距離と同じで、毎日続けるためには、それが達成しやすいメニューを選びがちになってしまいます。例えば5km程度ののんびりジョグを繰り返すとか。
脚力をアップするのは筋トレと同じで、筋肉を損傷するほどの高負荷なトレーニングを行い、翌日に睡眠や栄養を摂って休息することで超回復し、以前よりも筋力が増した状態で後日トレーニングを重ねることが、強くなるための基本パターン。休息もトレーニングのうちであり、休息を必要としないというのは、レベルアップにつながる高負荷なトレーニングを行っていない証拠。
健康維持やダイエットだけでなく、マラソン大会で好成績をあげることが目的であれば、毎日欠かさず走ることの必要性はまったくありません。
欠かさず走ることを続けたいがために、雨の日も不調の日も走るようでは、レベルアップどころか、走らなければならないという余計なストレスが溜まってしまうだけで、何のプラスにもならないかと思います。
タバコが切れるとイライラするため、タバコを吸ってそのストレスを解消する喫煙と同じで、ストレス解消のためのストレスを作っているようなものです。



・ロング走で休む

25km以上のロング走を行う場合、途中で水分補給をする必要が出てくるのですが、自販機で飲み物を買ってゆっくり飲んだり、コンビニに寄ってしまったり、公園で少し休んだりしてしまっては、ロング走の効果が一気に薄れてしまいます。
高い心拍数と、荒い呼吸を維持しながら、長時間走る持久力を養うのがロング走レーニングなのに、走るのを停止して、心拍と呼吸のペースを一気に下げてしまっては、せっかく継続してきた持久力トレーニングがそこで一旦終わってしまいます。
トレーニングであってもレース同様に、走りながら給水できるようボトルとポーチを身に付けて走るか、公園での給水なら10秒以内で済ませるようにして心拍数をできるだけ下げないようにし、連続して走行するようにしないと、高負荷なロング走の意味がなくなると思います。
マラソントレーニングよりも、ピクニックの要素が強いマラニックは別ですが、走力アップのためのトレーニングであるロング走なら、途中で休んではいけないと思います。



・距離が短い

1回のランニングを5km程度で終わってしまう方が見えるのですが、非常にもったいない。
10~15kmをスムーズに走れるようになるとわかるのですが、スタートして最初の1~2kmは身体を目覚めさすためのウォーミングアップで、3kmあたりで完全に身体が温まって心拍数と呼吸のリズムが落ち着き、4kmあたりで一定のペースでリズム良く走れるようになります。軽度の足の痛みがあった場合も、それが麻痺するのはこのあたり。
そして、4~8kmで一旦身体がフッと軽くなり、ドンドン走れそうなセカンドウインド状態になり、このまま走り続けると持久力が鍛えられます。そのため、私の場合は4km(20~25分)くらいで、身体がマラソンのための有酸素運動モードとなったと感じるのですが、5kmのランニングだと、この一番美味しいセカンドウインドのところで終了なんですよね。
有酸素運動をすると、エネルギー源である脂肪が分解され、走力として利用されるにはある程度の時間がかかるので、最低限の運動時間や運動量をこなす必要があるのですが、この面から考えても、5km、時間にして20~30分というのは、トレーニングのゴールではなく、持久力を鍛えるためのスタート地点ではないかと思います。
ランニングの距離が5kmから10kmに変わっても、ランニングの準備や、走り終えてシャワーを浴びる手間は同じなんだし、5kmと10kmでは走行時間は30分程度の差。テレビやネットの時間を節約したりすれば、簡単に捻出できる時間です。
レース翌日の疲労抜きや、故障からの回復走、距離が限定された通勤ランなど、他の目的がある場合は別ですが、トレーニングとしてのランニングなら、最低でも8km以上は走らないと、マラソンのためのトレーニング効果はガタ落ちすると思います。



・LSD

ロング・スロー・ディスタンスの略のLSD。長い距離を遅いペース(キロ7~8分)で走り続けるメニューですが、私の場合はこのメニューの効果はありませんでした。
LSDを進めているコーチは、このトレーニングによって血流が良くなり毛細血管が発達し・・・、といった理由を挙げているようですが、実験データや、科学的根拠を挙げながら解説している方は、今まで見たことがありません。
キロ8分ペースでは効果があり、キロ6分ペースでは効果が低いだなんてありえないわけで、6分ペースのほうが心拍数が高くなり、血流が増すのは言うまでもなく、足踏みをしているかのような超スロージョグのほうが効果的という理由が理解できません。
マラソンの完走を目指している方や、サブ4が目標の方は、速さよりも長時間走り続けるための持久力を鍛える必要があるので、ゆっくりでもいいから長い時間走り続けるLSDのようなトレーニングは必要ですが、ある程度の走力のある方なら、速さを鍛えるペース走、スタミナを鍛えるロング走などの高負荷のポイント練習と、回復のためのジョグ(キロ5~6分ペース)を行えばよく、時間を浪費し、フォームを乱すLSDなんて不要だと思っています。

e-AthletesのコーチはLSD信者で、このコーチの解説を連載したランニング雑誌のクリールを読むと、LSDが必須のように感じてしまいますが、多くのコーチの意見を偏りなく載せているランナーズは、LSDは不要とするコーチの意見やメニューも掲載しているので、自分なりに良し悪しを判断することができます。
LSDは貴重な休日のトレーニング時間を大量に消費してしまうメニューなので、自分で数回試してみて、効果を感じなければ自分には合わないと判断し、メニューから外して、通常のロング走やジョグを行えばいいと思います。

ちなみに、多くのメダリストを育てた小出義雄監督の本でも、LSDのメニューが出てきますが、サブ3を目指したメニューに出てくるLSDは、2時間で25kmを走る(キロ4分48秒)、または、2.5時間で30~32kmを走る(キロ4分42秒~5分)というもので、極端に遅いLSDは出てきません。




・裸足ラン(ベアフット)

裸足ランは効果的です。なぜかというと、衝撃の少ない着地の方法を自分で学べるから。ソールの柔らかなランニングシューズを履いてしまうと、この感覚がわからなくなってしまい、かかとからガンガン着地をしてしまう、足に負担がかかりやすいフォームになってしまいます。故障を予防し、前進に効率的な走法であるフォアフットやフラットフットを学ぶのであれば、裸足ランが一番わかりやすいです。
ただ、裸足ランは短い距離を実験的に行うだけで十分であり、日頃のランニングを裸足で走るのはもってのほか。

ランニングの故障の最たる原因は着地の衝撃によるもので、これは初心者だけでなく、走力の高いアスリートでも悩まされています。
マラソンと同様に、足を使った持久力スポーツであるツール・ド・フランス。1日平均200kmを全日程23日間(休息日2日含む)自転車で走り続け、全走行距離3600kmもの行程を走る、脚力を酷使した競技ですが、これが連日可能なのは、着地衝撃がないからです。つまり、着地衝撃がないのであれば、これほどのパフォーマンスを発揮できる脚力と回復力が人間にはあるということになります。
そのため、ランニングの場合は、体重の2.5~3倍もの重量が足にかかってしまう、激しい着地衝撃をいかに軽減するかが最大のポイントで、車が転がりやすいことを目的に作られたアスファルトのような硬くグリップの良い舗装路では、特に足を守らなければなりません。自然の場所なら自然の裸足を、人工的な路面では人工的なシューズを使うというのが、ベストな方法ではないかと思います。

この裸足ランを薦めていた第一人者の吉野氏。裸足ランに対する弊害を医学的に特集したクリールの雑誌が出版されて以降、その雑誌を読まずして反論を残し、ブログを別の場所へ引っ越してしまったようですが、芝生や砂浜、学校のグラウンド、アフリカの大地のような自然の場所なら気持よくて爽快かと思うのですが、人工的に作られた特殊な舗装路で、マラソンのレベルアップを目的としたトレーニングを行うのであれば、裸足ランは利点より欠点のほうが多いです。裸足ランはスポーツや競技ではなく、趣味や遊びの分野と考えれば、これはこれで楽しいのかもしれません。

自分のランニングの目的は何なのか?その目的がマラソンの記録更新だったり、満足行く生涯記録を残すことだったり、怪我なく健康を維持することであるのなら、怪我や故障を誘発しやすい裸足ランや、トレーニングの質が落ちる距離信仰といった過ちは、回避できるかと思います。



・食事制限によるダイエットとサプリメント

体重が軽いほうがタイムは縮みますが、空腹やエネルギー不足で力が出ないようでは元も子もありません。肥満の方は、着地の衝撃が大きく、膝痛などの悪影響が出るので、食事制限によるダイエットをする必要がありますが、標準体に近いレベルなら、ダイエットなどせずに、しっかり食べてしっかりトレーニングをした方がいいと思います。
体重を落としたければ、食事で減らすのではなく、ランニングで減らすべき。
日本を代表するアスリートレベルなら、タイムを限界ギリギリまで詰めたいがために、食事による減量を考える必要があるかもしれないし、スタミナよりもスピードを重視する中距離ランナーの場合は、減量がかなり効果的かもしれませんが、サブ3が目標レベルの一般のランナーなら、減量での軽量化など考えず、十分な栄養を摂ってトレーニングに励み、脚力を強化するべきと思います。
ちなみに減量は、新谷仁美選手がすごかったですね。モスクワ大会の様子と、その後の引退会見の姿

また、私の場合はサプリメントも不要と思っています。サプリメントは、何らかの理由で通常の食事が取れない病人用の栄養剤の一種だと思っています。
イワシ、納豆、レバー、ひじき、豆腐、豆乳、鶏肉、卵、野菜、果物などを食べる方が、サプリメントよりも栄養価が高いし、価格も安いし、味もいい。
レースの走行中に、重量が軽く、カロリーが高くて、走りながらでも飲みやすいゼリーを利用するのは有効な手段ですが、それ以外では不要と思っています。

最近はサプリメントの広告が非常に多いのですが、あれだけ広告費が使えるということは、原価はものすごく安く利益率が高い商品という証拠ですよね。製造メーカーや、販売店は、「飽食の今の時代、栄養なんて普通の食事で十分なのに、馬鹿な消費者がいるおかげで、儲かって儲かって笑いが止まらないよ~」と思っているのかもしれません。
サプリメントに関しては、この本が非常に参考になりました。




・故障と必要以上の休足

ランニングでレベルを上げようとすると、ほぼ間違いなく故障をするのですが、故障と回復を繰り返すことで、走力はアップします。そのため、少しくらい痛くても、とりあえず走ってみて、1kmも走れないようなら休足し、3kmあたりで痛みが麻痺するレベルなら、ペースや距離を落としながら走っていました。その方が、休むよりも回復が早くなりました。また、その痛みをかばおうとして走るため、それ以外の部分が強化できました。
そもそも故障をするというのは、痛めた部分周辺の筋力が弱いことと、その弱い部分をバックアップする能力がなかったり、走法に癖があったりする証拠。
なぜそこが壊れたのか?どの筋力を強化すれば予防できるのか?どういったフォームだと故障部分にテンションがかからないのか?といったことは、故障中に試すのが一番わかりやすいです。
故障は程度の差が大きいので、安静にすべきか走るべきかは判断が難しいのですが、安静にした方がいいと自分で判断し、何日も何日も休み続けると、休み癖が付いてしまい、鍛えた脚力は弱り、カロリー消費リズムが変わるため体重が増加してしまいます。そのため、走れなければウォーキングや筋トレなどをして、体を動かすことを継続することが重要でした。
医者にしても教本にしても、故障したのに動かすことをすすめると、それで悪化した場合の責任を問われるので、「安静にしましょう」と逃げ言葉を使わざる終えず、それを信じて安静にしてしまいがちですが、動かしながら治した方がいい場合が結構多いので、自分で試行錯誤しながら試した方がいいようです。




他のランナーさんを観察すると、
どういったトレーニングをしているのか?
量と質はどうなのか?
どのような目的で取り組んでいるのか?
モチベーションの上げ方は?
といった部分の差で、上達の速い方と、記録が伸び悩んでいる方の理由がハッキリしてきます。

「人生、一度はサブスリー」というランナーズの連載では、記録が伸び悩んでいるランナーさんが次々に登場してくるのですが、この方の問題点は何なのかを自分なりにチェックすると、とても勉強になります。
大半の方は、ロング走をほとんど行っていなかったり、やたらペースが速かったり、1回の走行距離が短かったりなど、偏ったトレーニングをしているようです。
月間走行距離が無駄に多い方は、距離が短くなるスピードトレーニングを敬遠しているため、フルの記録が伸び悩んでいるだけでなく、ハーフの記録がかなり劣るようです。
逆に、スピードが大切と思っているのか、必要以上に速いペースでインターバル走などを繰り返している方は、ロング走を怠っているので持久力がなく、レースで30km以降バテ切って自滅というパターンがほとんどのようです。

私のTwitterのフォロワーさんに、すごく優秀な女性ランナーさんが見えるのですが、フォローした昨年夏の時点では、ラン歴は5年ほどあるものの、フルはまだ出たことがありませんでした。そのときの目標はサブ4だったのですが、当時のトレーニングレベルならサブ4は楽勝と私が答えたところ、案の定、サブ4は難なくクリア。それが昨年の秋のことだったのですが、今年の3月になんとサブ3.5クリア。女性のサブ3.5は男性のサブ3に匹敵するレベルです。
この方のメニューは、1回のランニングは9km以上がほとんどで、ペースは5分台前半のペース走と、5分台後半のジョグ。ロング走も定期的に行っており、距離は30km以上で、ペースは5分30秒前後と、ロングでも結構ハイペース。20km走では5分台前半、10kmのハイペース走は4分50秒前後のペースでメニューを消化。ビルドアップ走も行い、フィニッシュは4分50秒あたり。休息日もしっかりとっているおかげか、大きな故障もなく、コンスタントにトレーニングをこなし、月間走行距離は300km以上。走るルートに坂があるのか、Runmeterの集計結果には高低差が大きく出ており、脚力アップに繋がっているようです。今年、息子さんが大学に進学するとのことで、年齢はそのクラス。
順調かつ確実にレベルアップしている理由は、スピード、スタミナ、ジョグ、休息のメニューを偏りなくこなしていることと、Twitterやラン仲間とコミュニケーションを取りつつ、マラソンのモチベーションを上げているから、上達が早いのだと感じました。

私の場合も、持久力を養うロング走、レースペースを余裕で走るためのスピードトレーニング、体力と体重を維持し、ポイント練習の疲労を抜く回復ジョグ、栄養と睡眠をしっかり取る休息日、筋トレ(特に体幹)やストレッチなどの補強トレーニング。この5つのメニューをバランス良く回すことで、確実にレベルアップできました。
それには、距離信仰や、変わった走法、偏ったメニューなど、異質な価値観や無駄は捨て、目的や目標を一点絞り、そのためだけのトレーニングを行うことが重要でした。私の場合は、それがサブ3であり、達成できた今は、去年の自分を超えることとなっています。
その目的のために、地道に取り組んで結果を出して歓喜し、やり甲斐と生き甲斐を感じながら、毎日を楽しんでいる最中です。
もちろん、ストイックなトレーニングだけでなく、楽しむためのランニング(写真を撮りながらのマラニックや、低山のトレラン)も行ったり、自転車を利用したクロストレーニングにも励んだりしています。

年齢を重ねるごとに、運動能力は落ちるので、現状維持すら難しくなってくるのですが、それだからこそ、トレーニングの質が重要になってきます。
自分の現在の取り組み方を見つめなおして、最善、最良の方法を導き出して実践し、その効果を結果に出して実績を残すというのも、マラソンの面白さの一つかもしれませんね。

最近読んだ本なのですが、サブ3の目標を達成したマラソンの体験記と、そのトレーニング方法を書かれたこの本も、参考になるところが多いかと思います。
著者は、イーアスリートの有料メールでのコーチを受けたため、LSDのメニューが含まれてしまっていますが、トレーニング方法や考え方に関しては、共感する部分が多かったです。