2014/11/27

30kmの壁

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フルマラソンの大会に出場すると、最初は順調に走れていたのに、25km~35kmあたりで急に足が重くなり、ペースが一気にダウンしてきますよね。
ストライドが狭くなりピッチも遅くなり、頑張って走れば走るほど苦しくなってフォームがのけぞるので、更にペースが落ちてしまいます。次第に足の筋肉が引きつって痙攣しそうになったり、関節が痛み出したりし、走ることもままならない状態に。内蔵への負担も高まり、吐き気がすることもあります。
陸連登録の経験豊富なハイレベルランナーですら、30kmあたりで歩き出す方もいるほど。今回出場した、あいの土山やいびがわマラソンでは、30km以降でペースがガタ落ちする登録ランナーさん数名を、40代後半の一般ランナーの私が、いとも簡単に抜くことができました。そのくらいペースがガタ落ちしていました。
先日行われた横浜国際女子マラソンでは、田中選手(優勝)や岩出選手(3位)が活躍しましたが、上位につけていたロティチ選手は、40km過ぎでペースダウンして嘔吐。エリートランナーですら、この地点では体調不良になってしまいます。
私も以前までは後半失速タイプで、前半のタイムの貯金のおかげで、何とか記録は残せたものの、ラストはいつ歩き出すかわからないほどの疲労困憊状態となり、走り方としては最悪でした。
10kmやハーフマラソンではこのようなことはなく、苦しいながらも最後まで力走できるのですが、フルの場合は必ずと言っていいほど、身体が異常な状態に陥ります。
30km以上の距離を走るというのは、一般人の身体能力の限界を超えているのでしょうね。これ以上走ると足を痛めたり、身体を壊したりするので、壊れる前に足の痛みや疲労を強く感じさせて、走ることをやめさせようと脳が指令を出しているのかもしれません。

この30kmの壁をなくすには、トレーニングで鍛えるしかなく、それを目的とした本も出ています。


この本の場合、後半にペースを落とすことなくサブスリーをクリアするには、20~30kmの距離を、1kmあたり4分~4分5秒ペースで走れるようになることが、最終目標になっています。サブスリーは平均4分15秒/kmで走ればいいのですが、そのペースよりもはるかに速いペースで走れる走力が求められています。ここまで強くないと、目標達成は無理ということですね。
30kmを4分/kmペースでなら2時間で走れます。残り12.195kmを4分55秒/kmペースで走ってもサブスリークリア。サブスリーを狙っているランナーさんの走力なら、この4分55秒/kmペースは余裕ですよね。残り12.195kmを4分30秒/kmで走れば、2時間55分ほどでゴールできます。
つまり、小出監督のサブスリーのための目標数値は、サブスリーよりもはるかに高く、2時間55分切りもクリアできそうなレベルなんですね。

サブスリーを目標にしているランナーさんは、大会での走行ペースは4分15秒/km前後に合わせて走りますが、すでにサブスリーの走力があればそのペースで押し切れるものの、まだ走力不足なら、後半は必ず失速し、30kmの壁を味わうことになります。
しかし、自己ベストよりやや遅いくらいで走るのなら、最後まで押し通せるし、後半に余力があれば、ペースを上げて自己ベストの更新を狙えます。
つまり、レースの前半は、今の自己ベストをリミットとした、やや遅いペースで走った方がいいのですよね。そして後半になって、トレーニングで頑張ったのなら余力が残るためペースが上げられるし、トレーニング不足なら、現状のペースを維持することが精一杯となります。
この場合、どちら方向に転んでも、30kmの壁は小さくなり、後半に大失速して、ゴールするのもままならないような状況は避けることができます。
そして、余力が十分残っており、後半にしっかりペースを上げることができたのなら、自己ベスト更新だけでなく、さらにその上の目標であったサブスリーもクリアできます。

目標が達成できるかどうかは、スタートを切る前にすでに決まっており、100ある自分の力をゴール地点までにすべて使い切るために、どう配分して走るのかがレースなんですね。
30kmの壁と言うのは、自分に目標タイムをクリアする力がまだ備わっていないのに、目標達成以上のペースで前半を走ってしまうため、30kmあたりで100を使い切りそこで終わってしまうだけのことだと思います。
トレーニングでどの程度走力が上がったのかを確認するのがレースなので、今の自分の100の力がどの程度のタイムなのかは、実際にレースで走ってみないとわからないのですが、トレーニングで現状維持ができていれば、自己ベストと同等のペースで前半を走り切ることはできるので、レベルアップ分は30km以降で確認できます。30kmあたりになると、身体の苦しさに応じたペースでしか走れません。レベルが上っていないのであれば、現状のペースを維持するのが精一杯。でも、レベルが上がっているのであれば、その身体の苦しさに応じたペースは、自然に上がります。

実際に、私が出場した大会では、前半は目標(自己ベスト更新)のタイムペースではなく、自己ベストよりも遅いペースを基準に走りました。こんな走り方をしたのは今回が初めてでした。いつもは、後半のタイムの落ち込みを考えて、目標タイムから算出した平均ペースよりも、少し速いくらいのペースで走っていました。
今回、自己ベスト5分ダウンを目指したペースの走りをしたところ、後半に余裕が残り、25kmあたりから苦しくはなるものの、ペースが大幅に落ちることはありませんでした。
そして、後半にペースが落ちたランナーを次々に追い抜くのが快感となってテンションが上り、結果的には自己ベストを更新できました。

トレーニングで目標をクリアできる走力をつけることができたのであればいいのですが、ギリギリレベルか、それに達していないレベルなら、スタートから目標ペースで走ったところで、当然後半に苦しみます。苦しくなった状態では、どんなに頑張ってもペースは落ちます。前半にタイムの貯金があっても、使い切るのは速い速い。

それなら、目標タイムを自己ベスト同等か、それより低めに設定して前半を走る。もし、後半に余力が残っているのなら、ペースを上げてみる。無理なら現状維持。自己ベスト以下のタイムなので、後半に潰れることはなく、苦しいながらも今の走りを続けることができます。いつものレースなら余裕などない30km以降も、今回はペースを落とした分だけ余力があるため、走法を工夫したり、気持ちをコントロールしたり、給水をしっかり摂ったりなど、いろんなことを試しているうちに苦しい区間が過ぎ去り、ペースアップできるかもしれません。

達成できるかどうかわからない大きな目標を目指して、前半からペースを上げるから失敗するのですよね。
長い期間をかけてトレーニングをした成果を発揮するフルマラソンのレースは、年に数回が限度のため、どうしても意気込んでしまい、後半に失速しやすいです。
30kmの壁を作っている原因は、自分の実力に対して目標タイムが高いという、自信過剰な考え方なんですよね。

レースで目標を達成するには、それよりもはるかに高い走力が必要だということを小出監督の本などで教われば、今の自分の目標値を下方修正するしかありません。年ごとの加齢によるパフォーマンスダウンを考えると、目標はギリギリ自己ベストか、ややダウンくらいのレベルが妥当。そのつもりで前半を走れば、後半大きく失速し、もがき苦しんでわけのわからないレースで終わってしまうようなことが避けられ、次につながる充実した中身の濃いレースになることかと思います。
そして、トレーニングで頑張ったのであれば、後半に余力が生まれるので、最後まで力を絞りだすだけで、自己ベストを更新できます。それよりも上の目標は、棚ぼた程度の気持ちで期待しておけば、達成できなくても苦にはならないし、気落ちすることもないです。

あとちょっとでサブ3.5やサブ3のランナーさんは、このキリのいい目標は一旦捨てて、自己ベスト弱あたりを目標にしてレースを組み立てると、好結果が出るように思います。
私は次戦のフルも、この作戦で挑む予定です。