この本を読んでみました。章立てはこのようになっており、
第1章 簡単!「腹走り」をマスター
第2章 ローリング走法で長距離をラクに走る
第3章 自己ベスト必達!砂田式トレーニング
第4章 マラソンは7割がメンタル勝負
第5章 サブ4/サブ3.5/サブ3必達! 砂田式3か月プログラム
第6章 砂田式レース攻略術
第7章 ウルトラマラソンでフルマラソンが速くなる!
マラソンのための走法や、トレーニング方法が解説されています。
タイトルにもある「腹走り」というのが非常に気になるのですが、骨盤や体幹を意識して走るというものを、腹に置き変えるような感じで、「お腹に力を入れて足から頭まで一本線に」保ちながら前傾させて走るとのこと。
そうすることで、故障が少なく、走る姿勢がドンドン良くなり、お腹まわりがシャープになるのだそうです。
私の場合は、腹走りよりも、体幹を意識し身体を軸にして走ると説明された方がピンときたかも。絶えず腹筋に力を入れてられませんもんね。
具体的に説明もされていて、
足が大きな円を描いて着地の瞬間だけ1点で地面と接するイメージ。
自分の骨格に合わせてダイナミックに動けるストライドとピッチがベスト。
ダイナミックに走っていると、つま先が視界に入り、後ろから見ると蹴り出した足の裏側が見えるようになる。
また、着地に関する説明では、
かかとのやや内側から着地して、拇指球に体重を乗せてから、小指の付け根である小指球から抜ける意識を持つようにする。
「腹走り」の前傾姿勢で推進力を発揮するにはカラダの構造上、足裏の3点のなかで拇指球に体重を乗せて走るのが最適。
とのこと。
フォアフットやフラットフットの着地の件も書かれており、砂田氏の意見は、
フォアフットのアフリカ人ランナーは、もともとアキレス腱が長くて太くて丈夫。
幼い頃から靴を履いて過ごしてきた日本人の多くは、歩くときはかかと着地が身についているから、大人になってから付け焼刃的にフォアフット着地を真似しても身につかないケースがほとんど。
前足部着地はアキレス腱やふくらはぎへの負担が大きいので、その部分の故障につながるケースが後を絶たない。
ランナーも十人十色で個性がありますから、日本人の中にもフォアフット着地やフラット着地が合っている人もいるでしょうが、「話題だから」という理由でフォアフット着地やフラット着地をなかば無理矢理試さない方が無難です。
と書かれていました。ちなみに私はフォアフット。走っている姿を横から見ると、足の着地点は、身体(頭)の真下あたりに着地するのが最も効率的で、そこへ自然と着地しようと思うと、拇指球あたりからの着地になります。
その場で立って、駆け足の足踏みをすると、拇指球から着地しますよね。つま先を引き上げれば、かかとからドンッ!と着地できますが、非常に不自然で衝撃も大きいです。
歩いている場合は、身体の前方に着地するので、かかとからの着地が自然になりますが、走る場合は、前方に着地してもブレーキになるだけなので、着地は頭の下(若干前より)となり、拇指球から足裏全体へ体重をかける形になります。そのため、アフリカ人だからといった人種の違いや、裸足だったという生活環境などは関係なく、人間の身体の構造からすれば、拇指球着地が当たり前になるはず。
このフォームだと、腰下の前傾姿勢が保ちやすくなるため、自然と身体が前へ進みやすくなります。
また、フォアフットはかかと着地よりも、ふくらはぎの筋肉に負担はかかりますが、かかとから着地してしまい、治りの悪いひざを痛めるよりはマシです。
フォアフットのランナーが、かかと着地しようと思うと、股間をやや前へ突き出し、つま先を意識的に上げ、腰が低いフォームで走らなければならなるため、かかと着地は非常に走りにくいフォームということが実感できます。
また、この著者の説明では、かかとやや内側から着地とあるのですが、一般的にはかかとの外側になるはずで、意識的とは言え、かかとの内側というのはかなり特殊のような気がします。
本に戻って、腹走りの具体的な説明の続きですが、
着地の時は"貯め"を意識する。着地してから拇指球に体重を乗せたタイミングでピークに達する。
トップランナーがゆったり走って見えるのは、1歩ごとに"貯め"の動作を行っているから。
腕は振るのではなく、ヒジを後ろに引くイメージを持つのが正解。
腕は低いポジションでリラックスさせる。
シューズを選ぶときのポイントは、少し余裕があるサイズを選ぶこと。
これは、ウォーキングシューズでもランニングシューズでも同じ。
理由は、全身をダイナミックに使う「腹走り」では、足指で地面を確実に捉えることも重要なポイントになるため。
と書かれていました。このシューズ選びに関して、反論する内容がこちらの本。
こちらの著者は、ピッタリサイズ(やや小さめ)を買うことをすすめています。
私もランニングシューズはピッタリサイズ派。ただ、足型が合うシューズが少ないため、小指など、部分的に当たりが強いシューズの場合は、仕方なくやや大きめを買い、厚手のソックスで調整することもありますが、基本は指先がアッパーのつま先に触れるくらいのサイズを選びます。というのも、ランニングシューズは買って数回履けば、まず先にインソールがヘタってくるので、買った時よりもゆとりが出るのですよね。それに、ジョグ程度のスピードなら大きめでも問題ないのですが、キロ4分程度のペースになると、着地の力や、足の蹴りが強くなるので、ゆるいシューズだと、足が靴内部で前後に動いて足裏が擦れてしまい、力が逃げやすく足の痛みも発しやすくなってしまいます。
そのため、特にレースシューズは、薄いソックスでジャストサイズがベストだと思っています。
第3章は、トレーニングの方法が解説されていて、ビルドアップ、ペース走、LSD、インターバル、山走り(舗装路の峠走)について説明されています。これは、他の本とほぼ同じ内容。
ダートを走るトレランとクロカンについては、メリットよりも、足場が悪く小さな走りになってしまうデメリットの方を強調されているようで、
マラソンの実践的な走力を磨くなら、ごくシンプルに考えて、レースに近い環境でトレーニングをするのが望ましい。
トレランやクロカンをするなら、終わったあとに最低2~3kmほどのロードを走り、フォームをリセットしておいたほうがいい。
と書かれていました。また、トレッドミルも
屋内のトレッドミルと屋外でのランニングは根本的に違う。
トレッドミルでのトレーニングを全否定するわけではないが、マラソンで速くなりたいのであれば、ロードでの練習が必要不可欠。
とのこと。これは賛同。しかし、トレランやクロカンは、トレーニングよりも楽しさを目的にしているので、私の場合はメリットの方が多くなってしまいます。ただ、ダートは捻挫などケガの確率が高いので、レース期は避けるようにしています。
第4章はメンタル面。
・キツイ練習をランニングクラブに頼り過ぎない
・一人錬でレース後半の粘りがつく
・決めた練習は最後までやり切る
・恵まれた環境下でばかり練習しない
・あえて水分を控えてみる
といった項目で解説されていました。
第5章はレースまでの3か月プログラム。内容は、他の教本とほぼ同じ。
週1日の休養と、ポイント練習はインターバル、またはペース走。つなぎのジョグは60分。
土日にロングやLSD、長めのペース走の組み合わせなど。
第6章はレース攻略術。
食生活の説明と、サプリメント(アミノ酸とクエン酸の粉末を携行)、衣類(オススメはサイクルジャージ)、レース中のポイントや注意点など。
最終章は、ウルトラマラソンに関してで、ウルトラを走るとフルマラソンが遅くなるという俗説に対しての反論が書かれていました。著者本人が、ウルトラもフルも好タイムをマークしているので、ごもっともな内容。ただ、著者のウルトラの記録は、100kmをキロ3分44秒で走ったという一般人には考えられないハイレベルなものなので、まるっきり鵜呑みにもできないような気も。
また著者は、マラソンはメンタルが7割と書かれていますが、心肺機能や走力にある程度の実力があってこそ言える割合であって、この土台部分が弱いようでは、いくらメンタルが高くても好タイムは出ないと思います。
疑問に感じる部分もいくつかあったのですが、実力のある著者の本なので、非常に説得力があり、参考になった部分は多かったです。
Amazonのレビューでは、やや低い評価を付けている方も見えるようですが、安価な新書でこれだけの方法論や解説が書かれているのであれば、十分満足できるかと思います。