マラソンのトレーニング方法の本を読むと、どの本でも同じことが書かれています。それは、
・ジョグ
・ポイント練習(スピード、スタミナ)
・休養
の3つ。
そのときの自分のレベルに見合った強度に高めながら、この3種のトレーニングをバランス良く回していくのがマラソントレーニングの基本。
他のスポーツと比べると、非常に単純で簡単ですよね。
しかし、これが守れないランナーさんの多いようです。
・ジョグ
ジョグというのは、マラソン向きの身体に改良することが目的。
マラソンという競技は、普段の生活からは、かけ離れた能力が必要であり、人より多くのエネルギー生産能力(ミトコンドリアを増やして活性化)、多くの血液を流すための強力なポンプである心臓、血液を全身へ滞りなく流すことができる柔軟な血管、多くの酸素を素早く取り込み血液へ溶け込ますことができる肺機能、強いキック力を長時間出力し続けるための筋持久力、走力の負担を軽減するための軽い体重、身体の体温調整を的確に行える発汗機能など、あらゆる能力を向上させる必要があり、人体大改造を行うほどの大変なことなんですね。これらの能力は短期に向上できるものではなく、そのための強化運動を日常生活の一部として組み入れ、長期にわたって続けないと改良できないため、その役割として、毎日でも続けられる程度の負荷のジョグが必要となってきます。
・ポイント練習
ポイント練習というのは、自分の限界値を上げるために必要なトレーニング。
10~15km程度のジョグを何度も繰り返したところで速く走れるようにはならないし、フルマラソンのような長い距離を走れるようにもならないため、インターバル走やペース走などでスピードを強化し、ロング走で持久力を強化し、ロングペース走でその2つの能力を合体。それらのトレーニングを繰り返しながら徐々に強度を上げていくことで、ようやく長い距離を速く走れるようになります。
「ゆっくり走れば速くなる」といった書籍が、すいぶん前に出版されていましたが、あのタイトルは引き寄せ目的であり、本を読んでみるとそんなことは一切なく、スピード強化のメニューもちゃんと出てきます。
例えば、書籍の中で紹介されていた、浅井えり子選手がこなしていたコントロールランニングというメニューの場合、
最初の1kmは4分30秒ペース、次の1kmは4分ペース、次の1kmは3分30秒ペース。この3km走を5セット繰り返し、計15kmを走る。
持続走のメニューの場合は、40~45kmを目安に走る。ラスト5kmはレースペースで走り、最後は全力で追い込む。
ウルトラマラソン的トレーニングでは、1kmを5~6分ペースで20分走り、次に5分歩く。これを6時間前後繰り返す。距離にして50~60kmほど。
他にもハードトレーニングがいろいろあるのですが、このメニューの間にLSDをさらに追加するのですよね。本のタイトルはあり得ない内容となっています。
・休養
休養は、練習をサボるわけではなく、トレーニングで疲労した身体の各機能を回復させ、さらに強化するために必要な期間で、しっかり休息をして修復に必要な栄養を摂り、長湯やストレッチ、マッサージなどを行って回復を促進させることが目的であり、休養もトレーニングの一環。
この重要な期間を無視し、無理矢理ジョグでつないだりしてしまうと、回復が遅れてしまうだけでなく、どんよりした重い身体がいつまで経っても続き、次のポイント練習に支障をきたすだけでなく、仕事や私生活にも悪影響を及ぼします。
よく疲労抜きジョグといって、疲れた時は身体を動かした方が回復は早まるといった方法論もありますが、それは疲労の強度によりけりであり、距離にして10km、時間にして1時間もスロージョグができないほど疲労が残っているのなら、その日はランニングは休んで栄養価の高い食事をとり、のんびり入浴をして早めに寝たほうが、5km程度の中途半端なジョグよりも回復が早まるのは明らかですよね。
疲労抜きジョグは、筋肉痛が治りかけてムズムズしているときや、レースやポイント練習でハードに攻めすぎて自律神経がおかしくなったときのリセット目的、仕事や私生活など、ランとは別の部位の肉体疲労や、精神的な疲労を抜くには有効ですが、トレーニングで蓄積された疲労を素早く抜くには、休養以外に方法はないと思います。
残業がなく、休みが多く、職種が肉体的に楽な方は、毎日でもジョグは行えますが、依存症かのように行った毎日のジョグは、「毎日休まず走ったぞ。すごいぞ俺」「月間走行距離、最高記録達成!バンザイ!」など、偏った自己満足につながりはしますが、多くのランナーが目標としているマラソンの自己ベスト更新や、走力向上を目的とする人から見れば、休養日返上で頑張ることなど、身体の仕組みを知らない無知で無謀な行為にしか映りません。
この3つのトレーニングを、自分に適した割合と強度でローテーションさせることで、走力は自動的にアップすると思います。それが本当だからこそ、多くのマラソン教本も同じ内容になっているわけで、これを無視して我流で行うトレーニングは、貴重なトレーニング時間を浪費し、いつまで経っても記録が向上しない壁を作ってしまう結果につながるように思います。
エリートランナーさんをチェックしてみると、猛烈なトレーニング量でビックリするのですが、そんなハードなメニューであっても、1週間のうちにジョグ、P練、休養は確実にこなしており、そのおかげで生活リズムが規則正しくなり、疲労も適度に抜けて、徹底的に追い込んだP錬も十分こなせるわけですね。
マラソンという、普段の日常生活からかけ離れた特殊能力を向上させるには、実績のある経験者や、その道の専門家の意見を尊重し、妙な価値観や我流は捨てて、一般的な方法論に素直に従うことが、上達の近道のような気がします。
私は故障のおかげで、この3要素をこなすどころではなくなってしまったのですが、そろそろ正規のメニューに戻れるほどまで回復してきたので、浮かれたり、得意がったり、がむしゃらになったりする感情的なトレーニングではなく、基本に忠実に従った冷静で無駄のないスマートなトレーニングをこなして行ければと思っています。