その貧血が慢性化してしまうと、治すのに2~3か月もかかってしまうため、大きな故障と変わらないほどの影響を受け、レース前の走り込み期にこの症状が出てしまうと、来シーズンのレースは棒に振ってしまうことになります。
しかし、レース半年前の今の時期に貧血に気づき手当をすれば、夏の終わりから始まる本格的な走り込み期には間に合います。
自分が貧血なのかどうかは、病院で血液検査をするか、献血をすれば検査を行ってもらえます。献血で血を抜き取られると、貧血の症状が加速するのですが、献血の前にヘモグロビン濃度の事前検査を行うため、すでに貧血症状の場合には献血ぜずに済むそうです。
また、貧血の症状として、スプーン爪があります。爪の表面に横しまや横シワが入って波打つような形になる症状で、私の場合は左手親指にできました。血液検査をしなくても、この症状でもわかります。
私は故障と貧血の症状が重なってしまったため、故障がなかなか治りにくくなってしまいました。故障の痛みが弱まり、徐々にジョグを開始しても、貧血による疲労が出てしまうため、トレーニング効果が出ないだけでなく、故障の痛みが再発してしまい、まともに走れるようになるまではかなりの日数を無駄にしてしまいました。
鉄分が多いと言われる、レバーやひじき、小松菜、にぼしなどを食べるようにしたものの、毎日欠かさず食べるわけにも行かないし、ランナーの場合はかなりの量を摂取しないと追いつかないということもあり、鉄剤のファイチ(医薬品)を買って服用しました。
そのファイチを飲み切り、改善したような感じだったのですが、精神的には良くなった気がしたものの、実際に走ってみると、特にポイント練習は苦しさがひどく、走り終えたあとは気持ち悪くなり、うずくまってしまいました。
3か月以上に渡った故障による大幅なパフォーマンスダウンからの再開だから、こうなってしまうのかもと思っていたのですが、再び爪の歪みが出始めたので、再度鉄剤を服用することに。今度はファイチでなくマスチゲンを服用しました。
この鉄剤の相性が良かったのか、徐々に走力が回復。貧血が少しずつ改善され、爪のシワもなくなり、通常の爪が生えてくるようになりました。
ポイント練習をしても、以前はダウンジョグも無理なほど疲労困憊していたのですが、今は全然平気で、1kmほどダウンジョグをしたあと、もう5kmほど走っておこうかなと思うほど、回復が早くなりました。
自宅でもすぐに横になりたくなるほど疲れがあったのですが、今は横になったら軽めの体幹トレーニングをしてしまうほど元気に。
貧血の症状は性格まで変わるのではないだろうかと感じるほど活発で意欲的になり、この違いに自分でも驚いています。
貧血の症状はゆっくり現れますが、改善もゆっくりしているため、変化になかなか気付きにくいのですが、トレーニング日誌に体調や苦しさの度合いを書いておき、それを振り返ることで、改善の様子がわかります。
数値のデータでは、ランニングでの平均心拍数が低下します。貧血時と同じ距離を同じペースで走ると、明らかに現在の方が心拍数は低くなります。それはポイント練習だけでなくジョグであってもです。
マラソン・トレーニングという本に、鉄剤服用による効果が書かれており、
効果は1週間から2週間で目に見えて現れてきます。5000メートルで1~2分の記録短縮は、よくあることです。しかし、この時点では、体内の鉄の欠乏はほとんど改善されていないので、さらに3~6ヵ月は鉄剤を服用する必要があります。1~2週間で服用を中止した場合、2~3か月から半年のうちに再び貧血が起こって、記録も低下します。
日本的な食生活では鉄分は不足しがちな上に、日本の気候では春から秋にかけて発汗量が多いので、日本のランナーは常に貧血の危険にさらされていると考えられます。特に女性では、この危険はさらに大きくなります。過去に貧血になったことがある人や、検査結果が正常でも低めの人などは、貧血予防を兼ねて、鉄剤を服用しても良いのではないかと思われます。この場合は、1~3週間に1錠で良いでしょう。
『マラソント・レーニング』P203 ベースボール・マガジン社
私は薬やサプリメントは否定的な人間なのですが、この鉄剤に関しては肯定的。そもそも、マラソンというスポーツは、一般生活からかけ離れたもので、何十キロも休まず走るなんてことは、人間が生きていく上でまったく不要で特殊な行為なんですよね。
普通の活動量なら、普通の食生活でいいのですが、特殊な行為を行うのなら、特殊な方法で栄養素を摂取するのは仕方がないと思います。
炭水化物やタンパク質、ビタミンなど、普段の食事で分量を調整できるものはいいのですが、鉄分の多い食材はかなり限定されているため、ランナーに必要な分を確実に摂取するのは難しい。
そして、貧血になってしまったら、回復までに多くの日数を費やしないといけないだけに、貧血のチェックや対策はランナーにとって重要のようです。
また、貧血が治ったから安心というわけでもないようで、マスチゲンの説明に、
貧血の症状が少しでも改善された方は、その後も根気よく服用し続けてください。
と赤色の太文字で書いてあり、ひねくれた性格の私は、製薬会社が儲けたいためと思っていたのですが、それは大きな間違いで、身体の鉄の貯蔵量を増やすには、半年ほどの服用期間が必須なんですね。体質を変えるつもりで治療しないといけないようです。
鉄剤はサプリメントでも販売されていますが、臨床試験で証明された医薬品の方が効果は確実。価格は高くなりますが、長期に渡って服用して治さなければならいない症状なので、効果が曖昧なサプリにかけてみるくらいなら、最初から医薬品を服用しておいた方が後悔はないと思います。
そして、服用期間が長いので、錠剤の分量の多い方が割安でお得。私はこれを買って飲んでます。
マスチゲンよりも各成分の含有量が多いエミネトンという鉄剤もあります。
ただ、配合されている鉄分が多ければいいというわけでもないようで、吸収を助けるビタミンも必要だし、一度に吸収できる量に限度があるし、吸収できても汗や尿で排出される分もあるので、食材で摂取することを基本にし、その補助として鉄剤を服用するといいようです。私はレバーなどを食べた場合は、鉄剤の服用は減らしています。
あくまでも貧血と、貧血からくる症状に効果があるのであって、寝不足や過労、精神的な疲れがなどが原因の場合は効果はありません。しかし、貧血でなくても、マラソントレーニングの本に書いてあるように、貧血予防として分量をかなり減らして服用しておくことは、予防策として効果がありそうですね。