2013/08/20

ランニングシューズの使い分け

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ランニングが趣味になると、お金がかかるのはレースでの参加料や遠征費。その次がシューズでしょうか。道具にハマりやすい他の趣味に比べて、ランニングはかなり安価な部類に入りますが、それだけに、多少高価であってもシューズくらいはしっかりしたものを選びたくなりますね。
どんなシューズを選んだら良いかは結構悩みどころで、ショップで店員さんに聞くといいのですが、その店員さんの知識や実績がどれほどのものかで左右されるし、店員さんからしてみれば、どうしても売上を意識する必要があるため、的確な回答が得られない場合もあったりします。
私はまだランニング経験は3年ほどで、ギリギリサブ3、ハーフは1時間20分程度というレベルなのですが、履いたランニングシューズは全部で12足。2足は使いきって捨て、使い古した1足はウォーキング用、1足はジム用にしましたが、他の8足(1足はトレラン用)は日々のトレーニングで活躍中です。初心者向けのタイプから、レースに使えるタイプまで使ってみたのですが、初心者だから初心者用を、ハイレベルだからアスリート用を使うという選択は間違っているように感じました。

ランニングは走るごとにレベルアップしますが、それに付随して故障も繰り返されます。ランニングで生じる故障の原因の大半は、着地の衝撃によるもの。片足の衝撃は体重の2~3倍と言われており、それを硬いアスファルトやコンクリートで足裏にガンガン打ち付けられるわけですから、故障して当然です。同じ動きを長時間繰り返す有酸素運動に自転車がありますが、自転車は足に直接衝撃を受けないため故障は少なく、ほぼ毎日のようにレースが繰り返されるツール・ド・フランス(1日平均200kmを全日程23日間(休息日2日含む)。全走行距離3600km)の競技が可能なのも足に優しいからです。マラソンのレースを毎日行うなんて不可能です。
その衝撃から足を守るのがランニングシューズなのですが、衝撃を吸収すればするほど足には優しいものの、走りは重くなってしまいます。極端な例は砂浜。砂浜を走ると足への衝撃は極めて少ないですが、スピードは出せないし、ひどく疲れます。それとは逆に、硬い路面を裸足で走ればロスなくスピードは出ますが、衝撃が強くなり足の故障や路面の異物による怪我を誘発してしまいます。そのため、適度な衝撃吸収力と自然で無駄のない反発力、そして保護力があり軽量で通気性のあるシューズが理想となるのですが、クッションが良くてロスのない硬さや、しっかりした保護力があるのに軽量という相反する機能が求められるので、その妥協点がそのシューズの特性となります。

足の筋力が弱い初心者は、足の屈曲による衝撃吸収力も弱いので、衝撃吸収力の高いソールの分厚いシューズを勧められることが多いのですが、ここで大切なのは、衝撃から足を守ることではなく、衝撃に強い腱や筋力を鍛えることですよね。
病院の対症療法も同じで、頭痛なら頭痛薬を、高熱なら解熱剤を服用させられますが、なぜ頭痛になったのか?そうならないためにはどうすればいいのか?モニターの見過ぎや睡眠不足、肩こりや視力などが原因であれば、そこを対処しない限り、いつまで経っても頭痛薬のお世話になってしまうどころか、副作用の害のほうが大きくなってしまう可能性もあります。
高熱の場合も、なぜ高熱が出ているのか?意味あって高熱が出ているのに、化学的にそれを抑えこんでいいのか?一時的に楽にはなるが、治癒にはマイナスではないのか?といったことを考えて対処することが必要で、対症療法は根本的な解決につながらないどころか、マイナス面が大きかったりします。
ランニングの場合でも、なぜ足が痛くなるのか?なぜ故障が多いのか?その理由はフォームだったり、今のレベルに合わない長い距離を走っていたり、柔軟性に欠けていたり、筋力不足だったりなど、いろんな理由があるわけです。故障をしてからでも、ある程度動かして血液やリンパの流れを良くして回復ジョグを行った方がいいのか、完全に休足した方がいいのかは、誰よりもその痛みを知っている自分が試して判断すればいいわけで、痛みを癒やそうとロキソニンを飲んでトレーニングを続けるというのは、故障や治癒の理屈を知らない極めて誤った判断となります。肝心な対策を棚の上に上げて、その場しのぎの処置を講じたものが、初心者用シューズであり、痛み止めの薬というわけです。

シューズがフィットしていなかったり、片減りしたシューズを履いていたりするのなら、シューズが原因なので新たに購入をする必要がありますが、それ以外はシューズでなくトレーニングで解決すべき事柄ですよね。クッションのいい初心者シューズを履くよりも、衝撃を感じ取ることができ、優しい走りをしないとつらい、中・上級者シューズを履く方が、トレーニング効果は高くなります。
ソールの薄い(もしくは硬い)シューズを履き、無理をしない距離やスピードで走り、衝撃を弱くする走りを試して脚に覚えさせるトレーニングを繰り返す。それでも痛みが出たのなら、その痛みを保護する部分の筋トレをする。スクワットやカーフレイズなどで鍛えて、その場でジャンプして着地するときの、フォアフットでの優しい着地をできるようにする。ジャンプしたときにかかとからドンッ!と着地なんてしませんよね。
それとは別に、走法などを考えずに、景色を楽しんだり、友達をおしゃべりをしながら楽しく走る場合には、気を使わずに走れるクッションのいいコテコテシューズを履くといった使い分けがベストではないかと思います。
ただし、衝撃がもろにわかるからということで、裸足でアスファルトを走るようなことをしてはいけません。元々、人間の足はアスファルトを走るために進化していないため、故障を誘発します。さらに一般道は、シューズを履いて利用する使われ方をしているので、ペットの排泄物、ツバやガム、吸い殻、ガラスや金属片が落ちており、怪我や衛生面を考えても、裸足ランは極めてリスクの高い行為となります。砂地や草地など自然な路面なら、自然な裸足でもいいかもしれませんが、人工的な道路では、人工的なシューズを履くべきですよね。

私は多くの種類のシューズを履いたことがないので、オススメするシューズはわずかなのですが、トレーニング・レース用にはアシックスのターサージール(またはジールTS)を、疲労抜きやファンランにはミズノのNexusや、アディゼロのBoston3がいい感じでした。ターサーはサブ3レベルを目指す上級者用で、ジョグではなくスピードトレーニングやレース向けのタイプ。初心者やサブ4レベルの方がショップで店員にすすめられることはないシューズなのですが、私はあえてオススメします。これを使って上手に走る。走ったあとのアウトソールをチェックして、自分の癖を知り対策するといったことに専念できます。グリップがいい分アウトソールの減りが早いので、シューグーを使って部分的に補修をしておくと、片減りせず経済的です。
そして高価なシューズなので、大切に扱うようになり愛着も出てきます。私はランニングシューズは本棚を使って部屋に飾っているくらいです。
もちろん、どのシューズでも、自分の足型に合うかどうかが最も重要なので、しっかり試着する必要があります。リアルショップで試してみて、「やっぱり合わないから…」と言いながら買わずに店をあとにし、安いネットショップでそのシューズを買うというような、私の真似はどうかと思うので、この方法はオススメしませんw Amazon在庫なら無料で返品可能なので便利ですね。ジールは新色の緑が個性的でいいですね。Bostonは新型の4が出たようですが、内容がかなり変わったようなので、3のような感じで使えるかどうかは不明です。






ランニングを続けて繰り返し故障を経験することで、だんだん足が強くなり、走力もアップします。そして故障になっても、どう対処したらいいのかがわかってきます。歩くのもままならない故障は休むべきですが、ゆっくりなら走れる場合や、2kmくらい走ると痛みが麻痺するようなレベルなら、案外走った方が治癒は進むようです。治癒が進むのは、運動をすることで血行が良くなったり、細胞が活性化するからなのかもしれませんが、リンパの流れが良くなることが大きいような気がします。もちろん、医学に疎い私なので、科学的な根拠などまったくないのですが、リンパは心臓のようなポンプがなく、一方通行をさせる弁と、筋肉の蠕動運動で流れを生んでいて、その蠕動運動に効果的な動きは、ウォーキングやランニングなどのポンプのような動き。血液はじっとしていても心臓のおかげでドクドクと全身を駆け巡りますが、リンパは自らの体の動きに左右されます。リンパは体の中を1周するのに約12時間かかるそうで、血液に比べると滞りやすく、運動やマッサージで流れを促すくらいしか方法がありません。リンパは老廃物や疲労物質を回収して運ぶ役割を担っており、血液の静脈で運びきれない老廃物を血液に変わって運んでいるそうなのですが、健康な状態とは違い、故障から回復する特殊な状況のときは、そのリンパの働きが非常に重要になってくるのではないかと想像しています。マッサージが効果的なのも、血流よりもリンパの流れの促進による効果が大きいのかもしれませんね。

というわけで、私のiPhoneの壁紙がランニングシューズだったりするわけですが、やる気が出ない時でも愛着のあるシューズを見れば、「ちょっとだけ走ろうかな」といった気分になれます。買ったばかりのシューズなら尚更。ランニングブームのおかげで、シューズの選択肢も増えているだけに、自分にベストなシューズにめぐり会えるといいですね。