2014/08/09

LSDのペースは?

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LSDと言うと、危険薬物や車のデフを連想する方も見えるのですが、ロング・スロー・ディスタンスの略のLSD。長い距離をゆっくり走るマラソントレーニングの一種で、データを利用した科学的根拠はほとんど立証されていないものの、走力アップの効果は高いようです。
ただ、このLSD、どのくらいの距離をどのくらいのペースで走るものなのか、いろんな意見が出ているようです。

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本で知ったり、誰かに教えてもらったりした内容を使い、受け売りで答えていることかと思うのですが、LSDの意味は共通しているものの、距離やペースの意見はバラバラですね。
購読者が多いランニング雑誌のクリールでは、トレーニング方法を解説している記事で、あるコーチがキロ7~8分ペースと書いてしまったりするので、それを鵜呑みにしている方もいるかもしれませんが、例えばウィキペディアのLSDに書かれているヘンダーソン氏の場合は、距離やペースに関して、
マラソンランナーはLSDで20マイル以上走る。LSDでは各ランナーが10kmを走るときのペースに比べて、1マイルにつき1 - 3分遅いくらいの心地よく走れるペースで走るのが一般的である。
Long Slow Distance - Wikipedia


と書かれています。20マイルは32.2kmほど。
1マイル(約1.6km)につき1分~3分ということは、1kmあたり約38秒~1分53秒。
仮に10kmを40分で走れるランナーさんだとすると、1kmは4分ペースなので、LSDは約4分38秒~5分53秒ペースで32kmほどの距離を走るというのが、ヘンダーソン氏のLSDとなります。

イー・アスリーツの鈴木氏の場合、LSDを解説したページで、下記のように書かれています。
中・上級者では、120~180分以上を基準として、1kmを6分半~7分半くらいで走る感じです。

佐倉アスリート倶楽部のコーチの場合は、サブ3を目指した上級編のページで、
LSDは1キロ6分から6分半のペースで行う。
何キロではなく、何分走るか。初めは120分が目安。途中、きつくなったらウォーキングしてもいい。それができるようになったら次は3時間LSDに進もう。
さらに段階が上がると、次はペース走になる。
と書かれています。この本の監修者は小出義雄氏ですが、編者は佐倉アスリート倶楽部と東京中日スポーツ。

小出監督が書かれた本の場合、サブスリーを目標にしたランナーさんに対してのLSDは、トレーニング時期によって少し違っており、1~2週目が20km以上を2時間(20kmとして6分/km)、5~6週目が25kmを2時間(4分48秒/km)、7~8週目が30~32kmを2時間30分(約4分41秒/km~5分/km)という内容。


そして、マラソントレーニングという本では、

LSDとは、長い距離をゆっくり走るという意味です。2~3時間から長い時には1日中走り続ける場合があります。走るスピードは、ジョギングのスピード(心拍数が約120拍/分)です。

マラソンの完走やサブ4を目指している方と、2時間30分を目指している方では、走力は雲泥の差なので、LSDのペースも当然違っており、対象者を示さずにキロ7~8分と書いている雑誌や本は論外となるのですが、ランナーのレベルを限定していても、指導者によってバラつきがあり、その差は結構大きいです。
一番理にかなっているのは、最後の書籍の心拍数を目安に走る方法。これなら、どんな走力の人でも、負荷は同等になります。気温や体調に左右されますが、私の場合、120拍/分で走ると、大体キロ5分半~6分ペースになります。

そして、いくらゆっくり走っても、10km地点と30km地点では疲労度が違うため、同じペースを維持すれば、どんどんキツくなり心拍数は上がります。LSDはペースを維持することが目的ではなく、長くゆっくり走ることが目的なので、無理にペースを守る必要はなく、ペースを落としながら楽な120拍/分を維持しつつ、長い距離を走り続ければいいわけですね。ペースを指定するよりも、心拍数の方が自然です。
心拍数を目安にすると、初心者ではキロ8分、上級者ではキロ5分くらいペースが開くのではないでしょうか。

キロ7~8分という意見を鵜呑みにして、3時間半を切れる中級ランナーなのに、無理に7分以上の遅いペースで走ろうとしている方も見えますが、7分以上のペースとなると、負荷が極端に少なくなるだけでなく、ウルトラ向けのすり足のような小さなフォームが体に染み付いてしまうし、血行を良くするのなら、ちょこちょこと進むスロージョグより、大きなフォームの早歩きをした方がいいんじゃない?みたいな内容になってしまいます。
誰に対してもキロ7~8分というペースをすすめ、遅く走ると毛細血管が発達し、血液が隅々まで流れるといった、科学的根拠が示されていない理由を上げ、速く走ってはいけないとランニング雑誌などで吹聴しているトレーナーさんの意見は、参考にすべきではないと思います。そもそも、7分ペースで走るよりも、5分ペースで走るほうが心拍も血流も高いのだから、その理由は当てはまらないですよね。

マラソントレーニングは、このLSD以外に、ペース走やインターバル走、ロング走、ビルドアップ走など、いろんな種類のメニューがありますが、自分のレベルの場合、どの程度の負荷で走ればいいのかがわからないことが多いですよね。本で調べてもハッキリしなかったり、意見がバラバラだったりするので、自分で試しながら決めるしかないのですが、私の場合はこんな感じで設定しています。

LT走=ハーフのレースペース
ペース走=フルのレースペース
ビルドアップ走=キロ5分(ジョグペース)から始めて、ラストはほぼ全力にペースアップ
ジョグ=キロ5~6分
(上記までの各メニューの距離は10~20km程度)
ロング走=距離は25~35km程度で、フルの10~20秒アップ。またはジョグペースの2種。

そのため、私の場合はLSDというメニューはなく、ロング走に含めています。
距離やペースなどは細かく決めなくてもいいのかもしれませんが、目安があった方が走りやすくサボりにくいので、GPSウォッチを使って把握するようにしています。
また、心拍計を使うと、自分の身体の負担が数値で確実にわかるので、トレーニングレベルの調整がしやすいです。
走力が上がれば上がるほど心拍数は下がるので、上達具合の把握もできてとても便利です。

私の場合、フルマラソンでの平均心拍数は150~155拍/分ほど。フルを走り切るには、この心拍数が限度のようなので(年齢が若いともっと高くなるはず)、この心拍数でいかにペースを速くするかが課題。
それには、155拍/分よりもはるかに速い心拍で走るLT走やインターバル走を行い、心肺機能を高めることと、高めの心拍数でも楽に長く走れるように、ロング走を行って、省エネで低負荷な走り方をマスターすること。そして、トレーニングでの故障防止のための補強トレーニングと、体力と疲労を回復させ、ランナー体質にするジョグが基本となっています。

トレーニング方法は人それぞれで、それが正解なのかどうかは、レースの結果で判断するしかないのですが、記録が伸びず大きな壁を作ってしまい、走歴と戦歴だけがひたすら増えてしまうサイクルには、はまらないようにしたいですね。
走歴2年半、フルのレース3戦目でサブ3を達成できた私の場合は、運が良かったという点が大きいのですが、教本の内容をすべて鵜呑みにせず、実際に試してみて効果が少なかったメニューは排除し、効果が高かったメニューのみを取り入れたのが良かったようです。

トレーニングメニューは高負荷と低負荷のバランス、スピードと持久力のバランスが大切で、どちらかに偏らないようにするといいような気がします。30代以下のランナーさんはスピード重視、40代以上のランナーさんは持久系重視のメニューに偏りがちですね。そのため、40代以上の方は、苦手なスピードトレーニングが減り、得意なLSDやロング走が増え、月間走行距離が必然的に増えてしまうので、質ではなく距離を重視してトレーニングをしてしまう方が多いようです。

サブ3を達成したランナーさんのアンケートがこちらのページにあるのですが、参考になる意見が多いようです。チェックしてみてください。

サブスリーランナーに訊く-サブスリーの秘訣がここに!