2013/06/13

ランニングトレーニングの勘違い

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ランニングの目的は人それぞれですが、今よりも走力を高めたい、レースでいい戦績を残したい、自己ベスト更新をしたい、満足できる生涯記録を残したいといった目的でランニングをされている場合、日々のトレーニングが重要になってきます。しかし、そういった目的なのに、勘違いしたトレーニングをされている方が多いような気がします。

例えば、月間走行距離を伸ばしたいとか、毎日休まずランニングをしたい、裸足ランで鍛えたいなど。
距離を伸ばそうと思うと、朝と晩の2部練習にし、足に負担のないゆっくりとしたペースで長々と走れば距離は伸ばせます。時間さえあれば月間500kmや600kmも可能かもしれません。
毎日休まずランニングをするのであれば、短い距離を走って20分ほどで終了という形にし、少々の雨なら走り、悪天候の時は体育館や高架下、ジムのトレッドミルを利用すれば達成できるかもしれません。
裸足ランなら、足裏の怪我のリスクが小さい綺麗な路面で、衝撃による膝や足首の痛みに注意しながら優しい走りに徹すればランニングは可能です。
しかし、これらのトレーニングを続けたところで、マラソンの記録が更新できるでしょうか?
ランナーズ7月号の「人生、1度はサブスリー!」という記事がいい例ですが、月間500kmも走っていながらサブ3が達成できないというのは、その人に素質がないか、トレーニング方法に問題があるかのどちらかの可能性が高く、案の定、この方のトレーニングメニューは、距離が短かったりペースが遅かったりなど、負荷の小さいものばかりでした。負荷の小さいトレーニングを繰り返していては、現状維持はできてもレベルアップは望めず、しっかり練習をしている満足感には浸れますが、レベルが上がらないまま貴重な時間を浪費するばかりになってしまいます。

月500km走った。毎日欠かさず走った。裸足で走った。などというのは、立派なことでも誇れるものでもなく、例えば、月300kmのトレーニングで3年頑張ったらサブ3を達成した!ということこそ、すごいことで立派なことと思います。
ほぼ一日中練習ができる実業団は別として、一般的な学生やサラリーマンはトレーニングに使える時間は限られています。限られた時間だからこそ、無駄なく効率的に使うことが重要で、そのためには、速度で追い込む日、距離で追い込む日、回復させる日、クロストレーニングの日、休息する日などを、自分のレベルに合わせてローテーションしながらトレーニングすることが効果的かと思います。マラソンはレベルが上がるに連れて、スタミナだけでなくスピードとのバランスが求められて来ます。目標のレースペースを余裕で走れる速さと、30km地点でも余力が残せるスタミナ、苦しい時の回避策、人に惑わされないペース維持や配分、足を痛めない走法、上り坂や下り坂の対策、走りながらの給水やタイミングなど、マラソンに必要な技能を分析すれば、そのためのトレーニング方法が見えてきます。

月間走行距離を伸ばすことにこだわってしまうと、スピード練習や疲労抜きの短いジョグを敬遠しがちになり、目標のレースペースで走り抜くための走力や身体能力、回復力を鍛えることができません。
毎日欠かさず走ることを気にしてしまうと、ロング走や休息日を敬遠してしまいがちになります。負荷の高いメニューを消化すれば、足の負担が大きく痛みを発するので、それを治すための休息日は必要になります。この必要がなく毎日欠かさず走れるということは、健康維持が目的のような、レベルアップ効果の低いメニューをひたすら繰り返している証拠でもあるわけですね。なぜ休まなければいけないかの身体的な理由を調べれば、毎日走ることの誤りがわかるはずです。
裸足ランは、足裏の皮膚は強くなるかもしれませんが、一般的なマラソンにこの部分の強さは求められません。そして、ランナーがもっとも気を付けるべき怪我や故障を誘発するだけでなく、路面の状態を気にすることなくしっかり走り込むトレーニングの妨げにもなってしまいます。
これらのような、妙な価値観にこだわってしまうと、マイナス効果の方が大きくなってしまい、目先のささやかな自己満足のために、後ろにそびえる大きな目標を逃してしまいます。

観光を兼ねて各地のレースに参戦し、おいしい補給食を食べるといったNHKのランスマのようなことが目的や、今の健康を維持したいだけというのが目的のマラソンもありますが、まだまだ若いもんには負けんぞ!という気力と向上心のあるおっさん世代、おばさん世代の方なら、目標を掲げてそれにチャレンジし、達成したときはガキのように喜ぶというのが、身も心も若くなれる秘訣のような気がします。その目標を達成するには、間違った価値観や競争心は捨てて、目標だけを見据えた合理的なトレーニングを行うことが大切。こういったことに気付くのは、自分が犠牲になったり実験台になったりするのではなく、人のミスを見て気付くというのが賢いやり方です。
「人の振り見て我が振り直せ」ためになる言葉です。
年を取ると、喜怒哀楽の「怒」と「哀」は増すのですが、「喜」と「楽」の感動が少なくなりがち。しかし、マラソンをうまく利用することで「喜」と「楽」を堪能することができます。その感動を思う存分味わうには、適切な目標と、それを達成するための地道なトレーニングが必要になります。そしてそのトレーニング方法は、書籍などでたくさん紹介されており、ほとんどは似たり寄ったりの内容。つまり、マラソンのためのトレーニング法は確立されているわけで、上記のようなトレーニング方法は一切書かれていません。
「レベルにあったトレーニング距離」
「休息も大切なトレーニングの一つ」
「正しいシューズの選択方法」
といった感じの内容で紹介されています。

私の次回のレースは10月のハーフマラソン。まだ日数はかなりありますが、月日が経つのはあっという間。昨年の成績を上回るタイムでゴールをし、ガッツポーズでおもいっきり喜ぶ自分の姿を想像しながら、コツコツとトレーニングに励みたいと思います。