2013/06/01

TARTHERZERLとTARTHERZEAL TS

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アシックスのランニングシューズは人気が高いようで、レースでスタート地点に並んでいる時にランナーさんのシューズをチェックしてみても、アシックスユーザーがかなり多く、次に多いのはアディゼロでしょうか。TV中継されるレースでのアスリートクラスの選手のシューズもアシックスは多いようで、スポンサーの影響を受けていない公務員ランナーの川内優輝選手もアシックスを愛用しているようです。(トレーニングではGT-2000、レースではSORTIE JAPANのようです。GT-2000は通勤などでも使っているので、地味な黒色だそうです。)
アシックスと言えば虎走ターサー。私はサブ3を狙えるレベルになったらターサージャパンを買おうと思っていたのですが、ショップで試着してみたところ、小指の当たりが強いのと、かかとがルーズのため足型が合わず、欲しくても使えないシューズでした。ところが、昨年登場したTARTHERZERL。これはヒールが改良されたらしく、試着してみたところフィット感が抜群に。アッパーが柔らかいため指の窮屈さもなく、びっくりするほど軽量。そして、Javariが昨年のクリスマスセールで3000円オフセールを行なっていたため、その機会にゲットしました。早速、試走してみたところ、シューズを履いていないかのような軽快感と通気性。そして、必要最低限の衝撃吸収力を備えていながらも、蹴りの力を無駄なく路面に伝えられるという絶妙なソールのしなりとクッション性。レースで使ってみたところ、念願のサブ3達成をし、神シューズとなってしまいました。

そのTARTHERZERLに、トレーニングモデルという位置付けのTARTHERZEAL TSというモデルが新たに加わりました。

プレスリリース-アシックス・企業情報トップ



ショップで試着してみたところ、ZEALとさほど変わらない感じ。販売価格も同じで結構高いため、ZEALがあるなら買うまでもないと思っていました。ところが、再びJavariでセール。今回は2000円オフだったのですが、TSの販売価格が9670円で(メーカー希望小売価格は13650円)、それの2000円引きで7670円に。Javariは返品が無料で安心なので、すかさず注文してしまいました。(購入以降、すぐに価格が変更されたらしく、割り引いて8647円となっていました)
届いたTSとZEALを家でじっくり履き比べてみたところ、意外と違いが多いことに気づきました。(ZEALはワイド、TSはレギュラーモデルを使っています)



メーカーの説明では、

1.摩耗しやすいアウターソール内側から蹴り出し部分に、耐久性に優れたラバー素材を採用したコンビネーションソール
2.安定性を高める、かかと部分の高硬度U字素材を採用
3.アッパーの人工補強材にトレーニング時の耐久性に配慮した素材を使用
参考ページ:Running Community

となっているのですが、私が計測したところ、まず重量(26cm片足)が、

ZEAL:180g
TS:205g

でした。ソールの厚みは現物を触った感じや履いた印象からするとTSの方が厚く感じたのですが、Amazonでの数値は

ソール
ZEAL:2cm
TS:1.5cm

ヒール
ZEAL:3cm
TS:2.5cm

と表記されており、私が実際に測ってみたところ、ZEALもTSも

ヒール:2.5cm
ソール:1.5cm

でした。



ソールの計測はフォアフットでの着地部分にあたる拇指球部分を測りました。履いた感じは、TSはソールのゴムを変更しているため柔らかさがさらにアップし、新品というのもあり、TSの方が厚みがあるような印象でした。
アッパーは繊維の種類が違っていて、ZEALはメッシュが粗めで通気性がいいのに対し、TSは密集しているため、通気性はZEALに比べていまいちなものの、繊維の伸びが少ないため足のホールド力は高いです。



補強パーツのパターンが微妙に違っていて(一番上の穴の横)、レースを締め付けたときに、TSの方が足指付け根当たりをしっかり確保してくれる構造になっています。これは実際に走行してみるとわかるのですが、ZEALはレースの締め付けが甘いと、距離が伸びるほどに足の締め付けが悪くなってくるのですが、TSの方はしっかりしており、足が寄れにくく感じました。
足先やかかと、レースの穴の部分は、ZEALがバックスキンに対し、TSはナイロンのようなツルッとした素材で(メーカーの説明では人工皮革でした)、見た目はTSの方が安っぽく感じます。



ヒール部分は、TSの方は「RACING STABILITY」と書いてあるのですが、触った感じでは、ヒールカップは大きさも硬さもほとんど同じようです。履いた感じも変わりません。他のアシックスのシューズはかかとのフィット感がいまいちですが、このシューズは抜群ですね。アディゼロのTakumi Renもヒールのフィット感は抜群ですが、それに匹敵するレベルです。この部分がいいという理由だけで、買ってもいいほどです。



アウトソールはTSがコンビネーションソールとなり、その部分は外側の黒い部分よりもかなり柔らかいです。走った際のグリップ感はさほど差は感じられませんでしたが、クッション性はTSの方が上に感じました。問題なのは、樹脂製?の黒い部分が、速攻で削れてしまう点。たった15km走っただけでこの状態。(写真のZEALはシューグーで補修済み)



私はO脚ではないのですが、着地の最初の地点が拇指球の小指側にかなり偏る傾向があり、どのシューズでもその部分が減ってしまうので、シューグーでの補修がお約束になっているのですが、ZEALは異常に減りが早いです。黒い部分と、その土台のゴムの部分が減ってしまうと、その下は布のような素材と柔らかなミッドソールがあるだけになるので、トレーニングで末永く使うのであれば、シューグーは必需品です。



ZEALもTSも、衝撃吸収力と反発力のバランスが良く、特に蹴りだしたあとの足の戻りが軽快に感じます。そのため、自ずとペースが上がるようです。そして、ヒールカップがしっかりフィットするおかげで、かかとがずれることなくシューズがしなるため、余計に反発力が高くなるのかもしれません。
ZEALとTSを比較した場合の印象は、計器で計測したらほとんど差はないのかもしれませんが、履いた感じでは微妙に違っており、ZEALがハードで軽快、TSがソフトでしっかりといった印象。ZEALとTSとどっちを買う?と聞かれたら、私はTSと答えます。重量はZEALの方が軽いのですが、アッパーのホールド感はTSの方が上に感じるのと、ソールの変更のおかげか、フォアフット着地での衝撃がマイルドに感じ、蹴りだしの反発力はゴムまりのような印象です。TSはトレーニングモデルとして売りだされましたが、ZEALの後発なだけに、ZEALの欠点を補ったモデルと捉えてもいいのかもしれません。



ところで、世の中には裸足ランを行なっている方が見えるようで、しかもアスファルトの上を走っている方もいるようですが、はっきり言って即刻やめたほうがいいと思います。例えるなら、裸足ランをしようというのは、グローブをせずに野球をしようと言っているに等しいと思います。皮膚は強くなりますが、衝撃の痛みを避けるために、しっかりとしたトレーニングができなくなるし、故障や怪我を誘発してしまいます。衝撃の少ない走法のチェックに、1km程度の距離をテストで走るとか、芝生や砂浜などを走って気持ちよさを求めるのであればいいのですが、日々のランニングが裸足ランというのは害が多すぎます。

裸足ランをすすめる方の意見に、人間はもともと裸足で生活をしていた。裸足こそ原点である。というものがありますが、裸足で生活をしている祖先や原住民は、狩りで短距離を走ることはあっても、20kmや40kmの距離を長々と走り続けることはなかったと思うのですね。新天地を求めて長い距離を歩いて移動はあっても、長距離を走り続ける必要性はなかったように思います。4つ足動物のような強い肉球やヒヅメを持てず、髪の毛程度しか毛皮がない軟弱な人間が今まで生存できたのは、道具を使う能力があったからで、道具を使うことこそ人間の本来の姿であり原点だと思います。他の動物と違い、人間の場合は自然のままの丸裸は不利であり危険なんですね。裸足も同じ事。しかも、自然の中で走る路面は砂地や草地。アスファルトやコンクリートではありません。

メキシコの脅威の持久力を持つ山岳民族ララムリ。ハードなマラソンのレースで上位を占めている民族ですが、そのタフな人達でも、裸足ではなくワラーチという草履を履いて生活をしています。いくらタフな民族であっても、裸足は害があり、パフォーマンスが落ちることを認識しているのでしょうね。
スポーツでは、アベベ選手が裸足でマラソンを走ったというものもありますが、あれはシューズが壊れてしまい、現地で代わりのシューズが手に入らず、仕方なく裸足で走ったわけで、好き好んで裸足で走ったわけではありません。

ランニングでの着地の衝撃は体重の3倍とも言われています。更に、着地の衝撃で血液の赤血球が破壊されるとのこと。これはランナーは避けて通れない症状のため、走り込みが多いランナーほど気を付けるべきですが、そのことを考えても、ランニングシューズの衝撃吸収力は重要となり、もろに衝撃が伝わる裸足ランはもってのほかになります。
さらに、アスリートランナーの世界記録保持者ハイレ・ゲブレセラシェ選手は、このように語っています。

「日本人のように、舗装道路やトラックなど硬い路面で練習をし過ぎるのは問題があるかと思います。私は、山道を走ることを強く勧めます。山は標高が高いし、アップダウンも激しいので、非常に効果的なトレーニングを行えます。アスファルトでの練習は、多くても週2回ほどです。アスファルトは筋肉への負担が大きすぎます。」
42.195kmの科学 P47より



裸足ではなく、ランニングシューズを履いてでも、ロードは負担が大きいことを示しています。
一般的な道路は、誰もが裸足で走るために利用していません。吸殻やガム、空き缶などのゴミは捨てるし、金属片やガラスも落ちているし、たんやつばを吐いたり、ペットの糞尿などもあり、靴を履いてならなんとか利用できるレベルとなっています。私がランニング中に、国道脇の歩道で注射器が落ちていたのも見たことがあります。そんな汚くて危険な路面を裸足で走りたくないですよね。汚れは走ったあとに洗えばいいかもしれませんが、走行中に足裏をすりむいてしまい、傷口からわけの分からないバイ菌が入るのは気持ちがいいものではありません。

私の知る限り、裸足ランをすすめる人には、実績のある著名な選手やコーチ、フルを2時間前半で走るアスリートといった実力のある方がいない点と、一般の方で裸足ランをすすめる方は、ランニング初心者だったり、単なる健康オタクだったりする場合が多く、マラソン戦績やランニングの経歴が乏しいのが現実。
草履のようなワラーチや、ベアフット用に開発されたシューズを使って走るのならまだいいのですが、裸足で舗装路を日課のように走るというのは、利点より欠点の方が多く、それをすすめている方というのは理解に苦しみます。
レースで満足な成績を上げたい。納得の行く生涯記録を残したい。怪我なく無理せず楽しいランニングを続けて行きたい。ダイエットや健康のためにランニングを継続したい。といった目的を持っている方は、評判のいいランニングシューズを履いて、ランニングでの害を予防し、しっかりトレーニングに励むことが大切。裸足ランは、衝撃のない走りのチェックに試す程度でやめておくべきで、適切な道具を使ってパフォーマンスを上げる方が、成長できると思います。