・乳酸性作業閾値(LT)が高いこと
・グリコーゲン貯蔵量が多く、脂肪の利用効率が高いこと
・ランニングエコノミーに優れていること
(ランニングエコノミーとは、レースペースで走る際に酸素を経済的に使える能力)
・最大酸素摂取量(VO2max)が高いこと
(多量の酸素を筋肉に送り込むことができる)
・素早い回復能力
【アドバンスド・マラソントレーニングより抜粋】
これらの能力を高めるために、各種トレーニングメニューがあります。
一般的には、ペース走、インターバル走、ロング走や、ジョグなどがあり、回復のための休養を適度に入れながら、これらのメニューをローテーションさせていくことが基本です。
しかし、ランナーそれぞれ体型や体質、性格、能力、生活環境が違うため、トレーニングは異なる場合が多いです。
フルマラソンを2時間15~20分台で走るエリートランナーさんが3名みえます。3名とも優勝歴あり。
自分とレベルは雲泥の差ですが、エリートランナーから学べるべき部分はないかと思い、このお三方のトレーニングを追ってみました。
チェックしたのは走り込み期である10月のもので、この10月にもレースが入っている方もあり、そのためのテーパリングも含んでいます。
Aさんは20分を切ることが現在の目標となっており、基本的なトレーニングメニューは、
・回復走(ジョグ)8~10㎞程度
・15~25㎞程度のペース走3'45/km前後
・LT走8㎞程度 3'12/km前後
・ロング走30~40㎞ 3'45/km前後
・インターバル 1km5本の場合2'55/km前後。距離は1㎞か800m
・体幹トレーニング
・休養は10日に1度ほど
・週末以外は基本2部練
となっており、偏ることなく周期的にローテーションしています。
この月のレースは3本出場しており、10㎞が2本でタイムは30'26"(PB更新)と31'28。ハーフは1:10'27
スピード系メニュー、スタミナ系メニューをバランス良く取り入れ、これらのポイント練習に十分力を発揮できるように、ジョグと休養を織り交ぜています。
教科書通りのタイプですね。
次に、Bさん。自己ベストは2:15'15。実業団の選手です。
・ジョグ40~60分 4'40~5'30/kmほど
・ロング 120分ジョグ5'00/km前後。30㎞ペース走 3'20または3'30/km。インターバル+ジョグで30㎞の場合も
・インターバル走 2'40~3'00/km 3㎞×4本や、(5㎞×2本)+(1㎞×1本)、3㎞+1kmなどバリエーション豊富
・クロカン 4'50/km程度。高低差最大20m程度の起伏を繰り返す
・休日3日/月
・基本2~3部練 早朝と夕方。3部の時は昼前に追加。
この月にフルのレースが含まれており、2時間21分台でゴールしています。
このランナーさんはクロカンを取り入れていますね。
それと、インターバルのスプリント距離が5000や3000、1000mと複合的。
3部練ができるのは実業団の強み。
最後にCさん、このランナーさんは驚くべきことに、トレーニングメニューにスピードトレーニングがないのですね。
・平日はほとんどジョグ 約10㎞と20㎞。一般道を走るためペースは一定していない
・ロング走35㎞前後。月に2~3度ほど。ペースは可変的でレースペースに達する場合もあるが平均ペースはキロ4分台前半。このロング走のうち、高低差のある山間を走ること1回。
・自転車 レース前の調整期に取り入れる程度。
・休養日はなし 回復はジョグの距離を減らすか、2部練を1本に減らすだけで、10月は休養日なし。
・2部練メイン 朝と夕方(ジョグは毎回同じコースなので通勤ランか?)
フルのレースが翌月にあり、2時間20分台を叩き出し優勝しています。
三者三様ですね。特にBさんの3部練と、Cさんのスピード練習なし、休養日もなしが印象的。
エリートレベルのランナーさんでも、それぞれメニューや強度が違っており、個性的だったりします。
ちなみに、レベルが格段に低い私の場合のトレーニングメニューを一応書いておきます。
・ジョグ10~15㎞程度 5'00/km前後
・ペース走 8~20㎞ 3'45~4'00/㎞
・ロング走 25~30㎞ ジョグペース~4'10/km
・インターバル 1000m×5、ヤッソ800、400m×10。レース直前の10月は行わず
・自転車 温暖な時期のみ。ジョグと同等の回復目的とヒルクライムでの強化
・補強 BCTとスクワット、カーフレイズなど
・休養日1~2日/週
サブ4レベルの場合は、スピード練習は不要でジョグとロング走だけでも十分上達しますが、サブ3を狙えるレベルになれば、最大酸素摂取量や、LT値の向上、脚筋力の強化を目指さないと、目標のレースペースを余裕を持って走れないため、追い込んだスピード系のメニューが必要なのは、多くの本でも書かれています。しかし、Cさんの例にあるように、そうとも限らないのですね。
もしかすると、ハイレベルのランナーさんにも、週に1度50㎞走を行うのみで他は軽いジョグだけ。あるいは、距離が長めの通勤ランのみといった、一般的なメニューからかけ離れたトレーニングで結果を残しているランナーさんが存在するかもしれません。
年齢が上がるにつれて、心拍数が上がる追い込んだスピードトレーニングは苦手になってくるので、これがなくても走力が上がるのなら、もうやめようかなと思ったりも。
でも、やはり今まで通りのトレーニングを継続することに決めました。なぜかと言いますと、モチベーションが維持できないから。
マラソンに正しいトレーニング方法などなく、結果を出せていればそれが正解になり、何もバリエーションを増やす必要はないし、スピードメニューの必要もないのかもしれません。ただ、メニューが簡素化したり、ワンパターン化したりすると、飽きやすくなりますよね。
それなら、今日は一般道でジョグを、明日は公園でペース走を、土曜はトラックでインターバル走を、休日は起伏のある林道を。といった具合にメニューや走路に変化を持たせれば、トレーニングが楽しくなるし、ペース走はキロ◯分台を維持する。インターバルは1000mを◯◯秒で確実にこなす。ロング走は30㎞を後半ペースアップで。といった目標を作っておけば、クリアできれば嬉しいし、達成感と満足感が得られます。
スピードメニューをこなさなくてもレベルアップできるのかもしれませんが、スピードを上げてガンガン追い込むメニューや、ムチャクチャキツいけどギリギリ頑張れるといったLT走も、これを行っているときは普段の生活では絶対体験できない強烈な集中力や闘争心を味わうことができます。
こういったメニューを織り交ぜた方が、毎回淡々と繰り返すジョグやロング走よりも、断然楽しいしやり甲斐があります。
そして人それぞれ考え方もトレーニング方法も違うため、今回のように他のランナーさんのメニューをチェックすることも大切ですね。何も真似ることはなく、何が長所で何が短所かを探るだけでも勉強になるし、良い部分だけを取り入れる、あるいは、悪いと感じる部分が本当に悪いのかどうかを自分で試してみるというのも効果的だと思います。
雑誌ランナーズには、マイトレーニングというコーナーがあり、エリートランナーさんのトレーニングが紹介されていますが、あのコーナーも非常に役に立っています。
そして、上位レベルのランナーさんに共通していることは、圧倒的な継続力ですね。
今回、エリートランナーさんのメニューを見て、トレーニングで必要なことは何なのか?という疑問が湧いたのですが、その答えは、トレーニングの方法や種類ではなく、
「継続性を保つために、モチベーションを上げる工夫をすること」
というものでした。
メニューの種類や、効果的なトレーニングも大切ですが、それよりも重要なのは継続性であり、それを維持するためにモチベーションを上げる方法を探ることでした。
今回、この3人のエリートランナーさんのメニューを逐一チェックすることも、モチベーションアップにつながったし、レースシーズン中の今は、完走証やレースの写真を部屋に貼ったり、レースで得られた自分に対する喜怒哀楽をノートにメモしたり、過去のトレーニング日誌を振り返ったり、マラソン関係のこのブログを書いたり、シューズを新調したりなど、トレーニング以外の面でも、モチベーションを上げる方法はいくらでもあります。
エリートランナーさんの場合は、表彰台に立つ、あるいは優勝するという強烈なステータスを得ることができるので、一般的なランナーには想像も付かないほどの強力なモチベーションが維持できるのかもしれません。
持久戦であるマラソントレーニングは、モチベーションをアップすることを重視するようにすれば、必然的にトレーニングは充実するようです。
私のまだ短いマラソン歴を振り返ってみても、このモチベーションを上げる努力を怠ったことはなく、おかげで気力の浮き沈みがありませんでした。だからこそ継続してトレーニングが続けられ、年齢の割にはそこそこの記録を残せるようになったのではないかと思います。
レースが好結果に終わると気が抜けてしまい、一気にやる気が失せてしまったり、逆に結果が悪くて悲観的になり、やる気を失うシーズンだったりしますが、こういう時こそモチベーションアップのための工夫が必要のようです。