2015/05/13

マラソン読書メモと高橋さん

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アドバンスド・マラソントレーニングを読んでの読書メモです。
※印の部分は私の補足



優れたマラソンランナーの生理学的条件とは

・遅筋線維の割合が高いこと(遺伝による)
・乳酸性作業閾値(LT)が高いこと
・グリコーゲン貯蔵量が多く、脂肪の利用効率が高いこと
・ランニングの経済性(ランニングエコノミー)に優れていること
(ランニングエコノミーとは? レースペースで走る際に酸素を経済的に使える能力)
・最大酸素摂取量(VO2max)が高いこと。
(多量の酸素を筋肉に送り込むことができる)
・素早い回復

筋繊維の割合以外は、すべて適正なトレーニングによって改善できる。


LTを高める

LTを高める最も効果的な方法は、練習ペースを現在のLTペースか、またそれよりも1kmあたり1~2秒程度速いペースにし、持続的なランニング、あるいはロングインターバルを行うことである。

LTペース=15kmからハーフマラソンのレースペースに相当する

※こちら↓のページを利用して算出も可能。

LT値計算

LTトレーニングの例

アップ15~20分
LTペース走20~40分
ダウン15分

※私の場合は1km4分を切るペースをめざして10~15km(40~60分)で行っています。アップは2km(キロ7分くらいのペース)、ダウンは1km(ウォーキングを含む)。

LTインターバル

5分間から3kmのインターバルを2~3分の回復時間をおいて2~5本行う。


グリコーゲン貯蔵能力と脂肪利用効率を向上させる

1度に90分間以上継続して走るロング走を行う
ロング走の長さを徐々に伸ばし、34~35km程度を走るようにすれば、故障することなくレースを最高の状態で迎えられることが多い。

ロング走はスロージョギングになってはならない。最も効果的な強度はレースペースから10~20%遅いペース。心拍数ではMAXの74~84%。

※サブ3ペース4'15/kmとすると、最も効果的な強度は4'41/km~5'06/km。
一般的な最大心拍数の求め方は
220ー年齢=最大心拍数
となるので、年齢が45歳とすると、最大心拍数は175bpm、ロング走の適正心拍数は130~147bpmとなります。

私が極端に遅いLSD(キロ7分など)を行わない理由は、それをするくらいの時間と元気があるのなら、上記のようなロング走をした方が効果的だったため。
超スローロング走と、一般的なロング走の両方を実際に試してみると、どちらが有益かがわかります。


トレーニングの心拍強度(最大心拍数に対しての割合)

VO2max走(5kmレースペース走) 93~95%
LT走 82~91%
マラソンペース走 79~88%
ロング、ミドルロング走 74~84%
有酸素走 70~81%
回復走 ~76%

※この本では心拍数を重要視しており、それを目安に走るため、心拍計は必須となります。

私もマラソンを始めた頃は、心拍数でなくペースタイムで十分と思っていたのですが、正確な身体の負荷や、自分の上達具合を心拍数以外で知るには、自分の感覚的な苦しさか、タイムトライアルでしか測れるものがないのですよね。心拍数の場合は、ジョグペースでも上達具合がわかります。(走力レベルが上がると、ジョグペースでも心拍数が下がる)

それに、起伏が多いコースのレースでは、ペースが大幅に乱れるため、頑張り過ぎなのか、手を抜きすぎなのかがわかりにくいのですが、心拍数を目安にすると自分の限度がわかるので、無理しすぎない程度にしっかり攻めることができます。

私はフルマラソンの場合155bpmを目安にし、上り坂などの一時的なピークは160bpmまでとしています。
155bpmより下回ると頑張り不足となり、160bpmを越えた状態で走ってしまうとあとでしっぺ返しがきて、ペースが上がらなくなります。


発汗によるメカニズム

1,血液量が減少する
2,心臓に戻る血液が減少する
3,1拍ごとに心臓から送り出される血液量が減少する
4,活動筋に送り込まれる血中酸素濃度が低下する
5,有酸素性エネルギーの産生が減少する
6,ペースを遅くせざるを得なくなる

研究の結果、体重の2%を脱水で失うと、パフォーマンスは4~6%低下する。

※単純にタイムで計算すると、フルが3時間で走れるランナーの場合、体重2%の脱水で、タイムは7分~10分ほどダウンすることになります。

回復

マラソンランナーが最も犯しやすい間違いは、回復日にハードな練習を行ってしまうことである。また、回復日に無理矢理距離を稼ごうとするのも、ありがちな間違いである。
自制心が必要。

※これ、重要ですよね。この間違いは走力アップよりも、月間走行距離を重視しているランナーに多いです。何のためのトレーニングやら。
休養や回復ジョグはトレーニングの一環だし、これらのメニューはハードな練習(=自己ベスト更新)のためにあるものですもんね。メニューは強・弱・休を組み合わせた、メリハリが大切だと思います。


回復日の練習強度(※回復ジョグ)

最大心拍数の76%未満。
また、ハーフのレースペースから、1kmあたり約1分15秒落としたペースとする。

※例えば45歳の場合、最大心拍数が175bpmなので、133bpm未満の心拍数で走るのが回復ジョグとなります。
また、ハーフのタイムが1時間30分とすると、平均ペースは4'15/kmほどになるので、回復ジョグは5'30/kmのペースとなります。
私の場合は、心拍数は120~130bpm、ペースは5分~5分30秒で行っています。


回復力をモニターする

トレーニング日記(体調記録)をつける

体重、起床時心拍数、気温、湿度、睡眠時間、質、食事の質、水分補給量、筋肉痛、活力レベル、標準ペース(5'00/km)の心拍数

※ここまで詳しく記録するのは大変なので、私の場合はトレーニングの内容と、体調や痛みの箇所と度合い、トレーニングでの気付きや課題、1週間単位での体重と体脂肪率を記録しています。

回復を早める方法

温冷交代浴
睡眠
マッサージ療法
栄養補給
(栄養補給は練習直後の1時間が勝負。この時間を過ぎると、吸収してグリコーゲンを合成する身体能力は66%も減少する。

※半身浴と交代浴はオススメです。長湯が快適なように私はタブレットを使っています。

ランディノート: 風呂で読書


クーリングダウンの目的

乳酸除去の向上
アドレナリン濃度の低下
筋硬直の軽減

※私の場合、ポイント練習の時はアップは2kmほどをキロ7分ペースくらいで。ダウンは1km程度で、最後はウォーキングをしています。
ある専門家さんは、ランニングにストレッチは不要といった意見を述べていますが、



私は走る前はラジオ体操のような動的ストレッチを、走ったあとはゆっくり曲げたままキープする静的ストレッチを行っています。念入りではなく簡単に。
ストレッチが効果的かどうかは、実際に試してみるとわかります。
特に走ったあとは、筋硬直が始まります。ハードなポイント練習や、レース直後などには、筋肉の硬直による張りや引きつりを感じている方は多いかと思います。そのため、誰かに指示されなくても、自ら率先してストレッチをしますよね。
運動後のストレッチやマッサージは筋肉の硬直を緩和するだけでなく、リンパの流れも良くなるかと思います。そのため、ストレッチはしないよりしたほうがプラス効果は高いと思います。足だけでなく、ランニング中はほとんど動かさない上半身のストレッチも効果的でした。
私の場合、運動前は身体が冷えていてストレッチ効果は低いので、アップをして身体を温めてから行うようにしています。そのため、トレーニング開始前のストレッチは、アップが必要なポイント練習のときのみに行っています。

こういった方法論は、人の言うことを鵜呑みにせず、まずは実際に試してみて、効果の有無を自分の身体で確認することが大切ですね。


2部練習は行わない(2部錬=朝と夜など1日2回の練習)

短い距離のレースのランナーには必要だが、マラソンランナーは1回の練習で走る距離を最大限に延ばすまでは、2部練習は行わない。2部練習が必要なのは、練習での週間走行距離が121kmを超えてから。

※小出監督も「1週間毎日5km走るより、1日20km、あとは1日おきに5km走るほうがマラソン向きの足になる」と言っています。
分割すると負担が減って楽になるものの、結果的に損をするのはローンと似ていますね。
速く走って完全休憩を入れ、再び速く走るレペティションという中距離走者向けのトレーニング方法がありますが、あれがマラソン向きではないのも、似たような理屈になるからだと思います。マラソンは持久力を鍛えてなんぼのもの。分割払いよりも一括払いの方が向いているようです。


テーパリング(レース前の調整)

基本原則

・レース3週間前から始める
・トレーニング強度は維持する
・トレーニングの距離は減らす
・回復日の練習は軽くするか、完全休養とする
・適切な食事と水分補給を行い、できるだけ回復を図る
・筋肉に張りがあれば、ストレッチ、理学療法、マッサージ、休養によって取り除く

レース3週間前:走行距離をトレーニングピーク時の20~25%減らす
レース2週間前:40%減らす
レース1週間前:60%減らす


VO2max練習(インターバル走)では、追い込み過ぎないこと

マラソンランナーがトレーニングで間違いやすいのは、インターバルトレーニングのペースが速すぎることと、その頻度が高すぎること。

マラソンでは、LTペースより若干遅いペースで走る。マラソンレース後に乳酸濃度を測定しても、安静時の値よりわずかに高いだけである。
したがって、マラソンランナーにとっては、1500mレースペース以上のインターバルのような乳酸を高めるトレーニングは、行う意味がないのである。
マラソンランナーにとって、VO2max練習は二の次の考えてよい。

※私はインターバル走は行いますが、月に1~2度程度。ポイント練習のスピード強化はLT走をメインとしています。

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他にも読書ノートには、これ以外のポイントをいくつかメモしてありますが、特に重要な部分を今回再度ピックアップしてみました。
実際にトレーニングを繰り返してみて効果を実感できたのは、キロ4分を目安に10~15kmを走るLTペース走と、ある程度のペースで走るロング走の2種。
ビルドアップ走やインターバル走、変化走など他にもいろいろありますが、今の自己ベストが出せたのは、LT走とロング走の効果が最も高かったと思います。
また、トレーニング時のペースですが、現在はこうなっています。(執筆時の自己ベストは2時間52分49秒)

ジョグ
5'00/km~5'30/km 120~130bpm

LT走(ハーフのレースペース)
4'00/km以内 155~160bpm

ペース走(フルのレースペース)
4'10/km~4'15/km 155bom前後

ミドルペース走
4'20/km~4'30/km 145~150bpm

インターバル走
1000mの場合3'35/km~3'40/km
800mの場合2'50/km~2'55/km リカバリー200mは90秒程度

ロング走
ジョグペース、ミドルペース、レースペースの3種
ビルドアップ気味で終わると効果的

あくまでも目安であって、気温や距離、体調などで加減しています。心拍数も距離が伸びるに連れて上がっていくので、平均値が目安となります。
サブ3に達していなかった当初は、これよりも15~30秒遅いペースでトレーニングをしていました。心拍数はその時のレベルに対しての負荷になるため、レベルが変わってもほぼ同じ数値になります。
同じ心拍数なのに、以前よりペースを上げることができれば、それだけレベルがアップしたことになるわけですね。この時点で、トレーニングペースの基準値を上げると、今までと同じ負荷になり、さらにレベルアップすることができます。

私の年齢が高いのもあり(今年の6月で49歳)、一般的な心拍数よりも低めとなっています。安静時は40~45bpm程度。
そのため、心拍が一気に上がるインターバル走や上り坂などは苦手で、逝きそうになってしまいます。
長時間頑張ることができる155bpm(フルマラソンでの平均心拍数)で、いかに速く楽に走れるようになるかが課題となっています。

ペースと心拍の計測はこの製品を利用しています。



EPSONの時計はバッテリー稼働時間が長く、ハードウェアはいいのですが、NeoRunのソフトが全然ダメ。NeoRunとデータを自動同期できるStravaで管理した方が便利です。
ハートレートモニターは、本来はiPhone用なのですが、EPSONやAndroid(バージョンによる)でも使えるので便利。2年近く使っていますが、故障なくベルトもヘタリが少ないためオススメ。現在は新しいモデルが出ています。


安静時の心拍数計測はスマホとこのアプリを利用。iOS、Android用が出ており、Runtasticのクラウドを介してデータを同期できるので、端末が複数あってもデータは統一できます。

▼iOS版

▼Android版
Runtastic Heart Rate 心拍計
Runtastic
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今までマラソン関係の本はたくさん読んできたのですが、走力が伸び盛りのマラソン2年生の時に出会ったのがこの本でした。
振り返ってみると、今のレベルまで上達できたのは、この本の影響が大きかったと思います。
こういったお気に入りの本は、書いてある内容がわかっていても、定期的に読み返すことが大切ですね。モチベーションアップにもつながります。

そして教本を読んでも、実行しなければ意味がありません。
マラソンのトレーニングは基本一人で行うため、どうしても我流になりがちですが、基本に返って1週間でもいいから本の通りにメニューを組んで頑張ってみるということが、結果的に走力アップの近道になるかと思います。


マラソンで金メダルをゲットした高橋尚子選手。
高橋選手は性格が非常に素直で、どんなに厳しくても「私はお人形、私はお人形」と思って、小出監督の指示に忠実に従ったそうです。
それだけでなく、監督の指示以上のトレーニングを、自ら進んで消化していたそうです。

素直で、忠実で、謙虚で、負けず嫌いで、努力家。

現在の高橋さんは、各地の大会にゲストとして呼ばれたり、レースの解説者として仕事をこなしたりしていますが、どの仕事でも全力で頑張っていますよね。
大会では、主催者やスタッフの方よりも頑張っているくらいだし、雨の日も風の日も極寒の日も、笑顔を絶やさず懸命にハイタッチをしてランナーを応援してくれています。
大会時のイベントでは、高橋さんが司会進行役を務めているときもあります。元気で張りのある声とハッキリした口調で場を盛り上げるため、プロの司会者よりも優れているくらいです。

解説でも、誰もが納得するような的確な解説をしてくれます。言葉は曖昧でなく、途中で切れたり、言いよどんだりすることもなく、最後までハッキリ話してくれます。
最近のレース中継は、複数の解説者さんを呼んで交代で解説していますが、高橋さんの解説を聞いていると、有森さんよりもハッキリとした言葉でわかりやすく、増田さんよりもレースに対して実践的に解説をしようとする意気込みと努力が感じられます(笑)

素直で、忠実で、謙虚で、負けず嫌いで、努力家。

この性格は、トレーニングでも仕事でも絶対有利ですね。どんな場合でも一切手を抜かない。

こんなことをいうのは失礼かと思いますが、トップレベルのスポーツ選手は現役を引退したとたん、覇気がなくなり一気にくすんで見えるのですが、高橋さんはいつまで経ってもやる気満々で、キラキラと輝いているのですね。
大会に参加したときに高橋さんの背中を見ていると、「あー、この人なら金メダル取るのも納得。凡人と違うわー」と感じてしまいます。
この性格を見習う気持ちでトレーニングをすれば、気持よく確実にレベルアップできるような気がしています。